その28
荷物を拾い上げ、レクサールはその後を追おうとするが、
「あ、レッ君待って!」
との声に、足を止める。
「アンヌ、何?」
「荷物ならアタシが寮まで持っていくよ? さっきのお詫び代わりに」
アンヌは小首を傾げながら幼馴染みにそう提案してきた。
どう答えたものか一瞬レクサールが悩むと、
「ま、好きにすれば良い。その荷物を持って学園長室まで行くのもアレだろう。素直に好意に甘えるのも一つの手だろうよ」
と、暁生が助け船を入れた。
「ん~、代わりに持っていって貰うには微妙に重い気がするんだよなあ」
多少気が引ける思いを口にしながら、「……まあ、そんな装備で走り回れるのなら余裕か。お願いするよ」と、アンヌの上から下まで眺め直してから考えを変えた。
「は~い。それじゃ、また後でね~」
にこにこ笑いながら、アンヌはぶんぶんと手を振り、そのまま荷物を受け取ると校舎とは違う方へと走っていった。
「寮はあっちなのかい?」
困惑した表情を浮かべながら、レクサールは周りに問う。
「……えーっと……」
呆れた顔付きの周囲を見てからアールマティは、「別に方向音痴というわけじゃないんだけど、舞い上がっているのかな? ちょっと追っかけるよ」と、慌てて後を追った。
「……そうか、余り昔と変わっていないのか……」
疲れた口調でレクサールは呟いてから、少し遠くなったリオンとの間を詰めようと駆け足で追いかける。
「レクサール・デズモリアさん!」
その背中に、サン・シールは大きな声を掛ける。「先程は申し訳ありませんでしたわ」
(……ああ、成程。確かに、良い人、だわ)
リオンの評を思い出しながら、レクサールは小さく笑った。
「おっと、俺としたことが忘れていた」
レクサールの様子を見ずにとっとと先に進んでいたリオンが立ち止まって振り返った。
「何をだい?」
それを見て駆け足から先程までと同じペースの歩きにレクサールは変えた。
「ようこそ、明星学園へ。俺達生徒一同、転校生レクサール・デズモリアを歓迎する」
然ういうと、リオンは畏まった態度で恭しく一礼した。
「……本当に今更だ」
レクサールはそれこそ久方ぶりに思わず腹を抱えて爆笑するのであった。




