その17
サン・シールが何かを思い出す前に、
「レッ君だっ!」
と、上機嫌を通り越して脳天気な声が辺りに響き渡った。
「……この声、まさか……」
レクサールは慌てて声の主を探す。
彼の視線がそれを見つけるのと、それが彼に向かって飛び掛かってくるのとほぼ同時であった。
慣れた動きでレクサールはバックステップをし、その突進を避けるのと同時に、右手で何とか軽やかに受け止めようとする。
「って、何だぁっ?!」
記憶の中のそれに対してならば、余裕で受け止められたはずなのに、予測外の力で押し切られ、諸共倒れ込む。
「……何をやっているんだ、君達は」
呆れた顔の儘、着流しの男は各々を片手でひっ捕まえて支えてみせる。「もう少し落ち着きを持ちたまえ。ネイさん」
「あれ? 明神会長、いたんですか?」
ネイと呼ばれた少女は、きょとんとした表情で首だけ振り向きながら言った。
「君より前からいたよ。せめて飛び込むなら制服の時にしておきたまえ。流石に実行隊の巡回装備で私服の人間に突っ込んだら 重傷で済むまい」
呆れた口調で、男は苦笑する。
その問答の間にレクサールは落ち着いて立て直し、自分諸共地面にダイブしようとした幼馴染みを上から下までじっと見た。
確かに明神会長と呼ばれた男が言った通り、明らかに生身の人間に対して突っ込んできて良い様な姿では無かった。




