その3
「はい、姉さん失格。リサ姉は?」
姉の発言をばっさりと切り捨て、リオンはリサに水を向けた。
「ん~。普通に考えるとイシュタルちゃんと同じ結論になるんだけど、そうじゃないのよねえ」
困り果てた顔付きで成績表をもう一度見つめ直し、リサははたと気付く。「……なんでこの子、実践科目の魔導も理力も奇跡も水準以上の点数なのかしら? 現世の住人だからと云って、少しおかしくない?」
「はい、リサ姉正解。ちゃんと見れば分かる様になっているんですけどねえ、姉さん」
ニヤニヤと笑いながら、姉を見遣る。
「五月蠅いわね。私たち魔族や、リサみたいな神祇に連なる者が全種制覇していたら珍しいけど、人間ならば理論上有り得るでしょう?」
イシュタルは弟の嫌味に負け惜しみを返した。
「イシュタルちゃん。人間であったとしてもこれはレアケースよ? 流石にそれはリオンちゃんが莫迦にするのも当然よ」
親友の反応にリサは苦笑した。
「ええ。神々の力を使う奇跡と我らが故郷たる魔界の法則を用いる魔導は基本的に相反しますからね。現世の森羅万象を元に術を行使する理力は兎も角、奇跡と魔導を同時に使いこなすとなると、それだけでもレアスキルというモノです」
真面目な表情でリオンは解説する。
「でも、それがどうしたの? この年齢でこの成績は凄いけど、どっちつかずになって実戦では使い物になるとは思えないのだけれど?」
イシュタルもまた先程までとは違い、真面目な表情で首を傾げて見せた。
「いやはやいやはや。姉上の御慧眼通りとなりましょうな、本来なら」
意味深な笑みを浮かべ、リオンは右手の人差し指を立ててずいっと前に突き出す。