その9
「魔王を輩出出来ない? 魔王とは生まれ持っての存在では無いのかい?」
リオンにレクサールは正直に尋ねる。「申し訳ないが、魔族に関しては殆ど何も知らないも同然なんだ」
リオンはゆっくりとした動きで立ち止まり、脇にある大木を見上げながら、
「ふむ。そこからか。……ま、丁度良い時間稼ぎになりそうだ。多少、長話になるよ」
と、沿道の脇にあるベンチを指差した。
それの意味を悟ったレクサールは荷物をその脇に置き、ベンチに腰掛けた。
「簡潔な説明は苦手なんだがね、魔界は天界と違い実力主義、悪く云えば弱肉強食の世界だ。どんな底辺に生まれようと、実力さえあればのし上がれる。その為、トップを特定の家系で持ち回りにしている天界と違い、一番力があるモノがその時の魔界の皇帝となる。と、云っても、皇帝になる為には特定の称号が必要となるから、最強の魔族が皇帝である、とも限らないんだがね。まあ、基本的にはそう考えておけば問題ない」
レクサールの前をゆっくりと行ったり来たりしながら、リオンは静かな面持ちで説明を始める。
「ふむ、皇帝を頂点とした実力主義の世界、って事か。ところで、称号と云うのは?」
自分なりに噛み砕いて理解しながら、レクサールは新しい用語の説明を求めた。
「神族もだが、天界と魔界の一部の住人はこの世界に於ける属性を有している場合がある。大抵は己の血統に宿る職能とでも云うべき力が昇華され、その属性を最も上手く扱える存在に宿るモノだな。分かり易い例で云えば、我々魔族だと七つの大罪あたりか」
「傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲、だったか?」
前の学校でも教わっていたことだったため、即座にレクサールは答えられた。
「その通り。それを体現している存在がその称号をこの世界から預かる。それが称号持ち、だ。神族にしろ、魔族にしろ、称号を有する連中は押し並べて化け物揃い。まあ、触らぬ神に祟り無し、だな」
桑原桑原と呟きながら、リオンはクスリと笑った。




