その8
「厄介な人たちが門の前にいてな。おかしいなあ、ばったりと出くわすことが無い様に予定を組んだんだが、好事魔多しってヤツかね、こいつは」
レクサールが今日見てきた中でも一番険しい表情を浮かべ、リオンは呟く。
「面倒事か?」
「俺からしてみるとね。君を巻き込まない様に根回ししておいたのが逆に仇となったか。出会い頭に副長直属の実行隊とはな。今から裏門に回ろうとしたら逆に怪しまれる。手は打っておくべきだろうが、正面突破と行くか」
自分の影に向かってリオンは手で合図を送り、今一度前方を確認する。「……やっぱりこっちに気が付いているっぽいな、サン・シールちゃん。時間稼ぎはさせて貰おう」
「それで、何を警戒しているんだい?」
「君の前の学校でどうだったかは知らないが、うちの学校の風紀委員は結構力を持っていてね。学園内の治安維持の為に委員の中でも腕利きを集めた荒事専用の部隊 がいる。主にうちの学園長である戦女神の眷属にして使徒である戦乙女を中心とした融通の利かない方々でね。学内の治安を守る為ならば、ある程度の強権発動すら認められている。中でも、鬼とまで渾名されている副委員長が率いる直属の実行隊は僕と相性が悪くてねえ」
気付かれない程度に歩くペースを緩め、遠目で見ればレクサールに周りを説明している様に見える振りをしながら、リオンは状況を解説した。
「それは君が魔王だから、か?」
「いやあ、それもあるけど、件の副長が魔族、それも上級魔族でねえ。その癖、実に生まれを間違えたとしか云えないぐらいに真面目な方でねえ。ヴェパール・サン・シール、魔王に最も近いと云われながら、代々魔王を輩出出来ない、そんな家に生まれた女性だよ」
何とも言いがたい表情を浮かべながら、困惑気味にリオンは言った。




