その2
「まあまあ、イシュタルちゃん。そんな云い方したら、リオンちゃんだって答えにくいでしょう?」
おっとりとした妙齢の女性が、取りなす様にイシュタルに言った。
「流石リサ姉、話が分かる!」
リオンは我が意を得たりとばかりに叫んだ。
「でも、ちゃんとした説明しなきゃ駄目よ?」
リサは泣く子ですら黙りそうな殺気を飛ばし、リオンを見据える。
「おおぅ」
やぶ蛇を突いたとばかりにリオンは天を仰いだ。
「まあ、私だってリオンが大したことでもないのに労力を無駄遣いするとは思ってないわよ? ちゃんと理由があるのは想像がつくのだけれど、履歴書からそれが読み取れないのはねえ」
イシュタルは履歴書を今一度眺めてから溜息を付く。「それで、何処が面白いのかしら?」
「ですから、あらゆる教科で優秀な成績を残しているところですよ。俺の事信じているんなら、ちゃんと資料は読んで下さいよ、姉さん」
肩を竦めながら、リオンは中半呆れた口調で言った。
「リオンちゃん。誰もが貴方ぐらいの読解力があると思って貰っては困るのよ? 私たちだって確かに優秀ですけれど、貴方と同じ発想ができるかどうかはまた別問題なのですからね」
たしなめる様にリサはリオンを諭す。
「はーい。それでは成績表を御覧下さい。何かおかしいと思いませんか?」
リオンは今一度、二人に問いかけた。
「全教科で点数良いだけじゃない」
つまらなそうにイシュタルは答える。