その28
(……どうせ非公式戦なんだから、データ取りに徹すれば良いのになあ。融通がきかないッたらありゃあしない。まあ、そこがあっちゃんの良いところか)
自分がやれない事を自分勝手にも相手はやるべきと思っている当たりが魔王の魔王たる所以か。リオンは容赦なく暁生の狙いを潰し続ける。
遠距離砲撃戦を狙っているのがばれているのは良いとして、それに持ち込めない現状だけはリオンにとって納得のいかない事柄であった。主導権は取れても、流れまでは奪い切れていない。一種の膠着状態が“六華比良”を攻撃に回されてからずっと続いていた。
この展開が初めてだったならば、リオンは遠距離戦に転ずる事は出来なかっただろう。
初めてだったならば。
(……さて、そろそろし掛けますか。“彼”に意趣返しする為、今日まで練ってきた策を試すのに丁度良い相手ですしね、あっちゃんは)
“六華比良”と暁生の間合いがほんの僅か、それこそ刹那の間で動きが鈍ったのをリオンは見逃さなかった。
瞬時に暁生の懐まで飛び込み、鎌で攻撃すると見せかけて目眩ましとばかりに右手で作った魔力弾を暁生の足元で破裂させた。
当然のように土埃が舞い上がり、辺りの視界が悪くなる。
その程度で怯む暁生でもなく、再び暁生の思考で即座に反応する圏内まで戻ってきたいた“六華比良”がリオンを攻撃するも、とっくのとうにリオンは遠距離まで身を翻していた。
「さあて、お立ち会い。これがリオン・ヴァシュタールの魔導砲撃だ!」
離脱と同時に魔力を増幅させる機構を有した杖型に【虚飾】と【憂鬱】を変化させていた。
禍々しいまでの闇が杖の先端に宿り、瞬時に臨界点を迎えた。
「闇に堕ちろ!」
リオンは気合一声、闇を解き放った。




