その4
「そんなに違うのかな?」
気を取り直すかの様に、レクサールはリオンに尋ねる。
「違うだろうな。魔族とは本来混沌の影響を強く受けている種族だ。秩序の固まりたる神族とはある意味で相容れない存在だからねえ。四角四面な生活など向いておらんよ」
苦笑しながらリオンはレクサールの問いに答えた。
「随分と違うものだな」
妙に感心しつつ、レクサールは呟いた。
「ま、世界が違うからな、文字通り。あと、魔族は地獄耳だから聞かれたくない言葉は心の中に仕舞っておく事を忠告しよう。俺なんかは鷹揚な方だが、気が短くて喧嘩っ早い奴らも割といる。神族みたいに取り繕う事をしない荒っぽい気質を好む種族が多いからなあ。逆を云えば、その本性を隠して恨みを何時までも持ち続けるタイプもいるから気をつける様に」
レクサールの呟きを聞いてか聞かずか、リオンはにこやかな表情で忠告した。
「リオンもかい?」
「さて? 俺はどっちだろうね」
真っ直ぐな質問にリオンは笑いながら言う。「まあ、俺も魔族だから喧嘩っ早いところはあるが、自制はするぞ。後が面倒になる場合とか、じっくりと復讐した方が面白い場合とか、な。それに、一応冥府の神の血筋も入っているから、他の魔族よりは反応が読みにくいかも知れんな。ただ、身内には自重する事にしている」
「身内には? 何か理由でもあるのかい?」
興味深そうにレクサールは問い返す。
「魔族だからと云って、誰でも彼でも罠に嵌めるというわけでは無いって事だ。当然理由はそれだけでは無いが、一種の枷だな。神族程血統主義では無いとは云え、実力主義を謳う魔族とて、なんやかんやで父祖代々伝わってきている力はピンキリだ。うちなんかは割と強い部類になるから、何も考えずに攻撃すると焦土しか残らないとかそんなオチもあり得る。誰にでもそんな対応していれば、周りが敵だらけになって生き残れないだろう? だから、一族の掟に身内には手を出さないというモノがあってな。そうやって身内を増やしているワケだ、うちの傘下に入れば攻撃されないよ、と喧伝して、な」
くすくすと笑い、リオンはさらりと碌でもない事を言い放った。




