その20
レクサール自身、なんでリオンの行動を終えたのか理解出来ていなかった。
少なくとも、聖リュニヴェールにいた頃はこれだけの動きをされたら見失っていたはずである。
(……すると、原因はこの学園、もしくはここで知り合った誰かしら、か?)
心中でそれを疑いながらも、今までなら見切る事も出来なかったハイレベルな試合展開を見逃すまいとじっくり観戦する。一時的なものか、恒久的なものかが分からない以上、そんな事を悩んでこの勝負を見逃す方が惜しかった。
その為か、先程からずっと左目の奥辺りが痛いぐらいに熱くなっている事も忘れて試合に見入っていた。
試合を見るのに必死で仕事を忘れていたのか、
「まあ、どうなっていたのかちっとも理解していない私に比べれば、御二方とも十分だと思いますが。ところで、ヴァシュタール先輩の中距離における戦術とは一体如何なるものなのでしょうか?」
と、取って付けたかのようにクーロンは実況を再開すると、アールマティに尋ねる。
「近距離戦の時は、魔力配分を身体能力強化と防御力に割り振っていたんだよね。術は自動で発動する防御障壁だけで、後は体捌きと純粋な剣術の腕でやり合っていたわけ。ある意味、明神君も同じタイプだから試合がきちんと噛み合った展開になったのはそれが原因なんだな」
「成程。あの“六華比良”という技法は防御用か」
アールマティの解説を聞き、レクサールは深々と頷いた。
実際、今のところ“六華比良”が攻勢に転じた事は一度も無く、暁生との間がある一定の距離を離れた途端に反応がほんの多少鈍くなるあたりから使い勝手が限られると踏んでいたのだ。




