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神と魔王と人類と  作者: 高橋太郎
プロローグ
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13/723

その13

「承知(しょうち)致(いた)しました、敬愛(けいあい)なる姉上様(あねうえさま)。それでは、失礼(しつれい)致します」

 優雅(ゆうが)に一礼(いちれい)すると、リオンはそのまま理事長室(りじちょうしつ)から外に出ようとする。

「ああ、そうそう。このことを知っているのは貴方(あなた)だけ?」

 扉(とびら)に手を掛(か)けたリオンに後ろからイシュタルは何気(なにげ)ない調子(ちょうし)で確認(かくにん)を取る。「実はもうこっちがドン引きするぐらいに根回(ねまわ)しが終わっているとか無いでしょうね?」

「それは考えすぎってモノですよ、姉さん。最初は気まぐれだったモノでしてね。別に誰かに相談(そうだん)する事無く、独(ひと)りで差配(さはい)していましたから。その証拠(しょうこ)にあっちゃんも知りませんよ」

 首だけ振(ふ)り返(かえ)り、身内(みうち)で無ければ蕩(とろ)かす様(よう)な極上(ごくじょう)の笑(え)みを浮かべた。

「そう、それなら良いわ。謀(はかりごと)は密(みつ)なるを以(もっ)て善(よ)しとす。暫(しばら)くは秘密(ひみつ)にしておきましょう」

 イシュタルは敢(あ)えてそれ以上追求(ついきゅう)しようともせず、諄(くど)いぐらいに念(ねん)を押した。

「分かりました。朗報(ろうほう)を期待(きたい)していますよ、姉さん」

 リオンは姉に笑いかけ、そのまま部屋を出た。

 理事長室を出て数歩(すうほ)歩(ある)いてから、

「さあ、楽しい学生生活の始まりです」

 と、リオンは誰にとも無く宣言(せんげん)した。

 その直後(ちょくご)、揺(ゆ)らめく己(おのれ)の影(かげ)に向かい、

「ああ、今まで送ってきた学生生活は何だったのですか、などと云う無粋(ぶすい)な突っ込みは無しですよ?」

 と、機嫌(きげん)良く笑いかけた。

 不満(ふまん)げな雰囲気(ふんいき)を醸(かも)し出しながら、影は再(ふたた)び静(しず)かになる。

「楽しみだなあ。生まれてこの方、これほど楽しみな事は無かったなあ」

 浮(う)き浮(う)きした調子でリオンは足取(あしど)りも軽く、廊下(ろうか)を歩いて行くのだった。

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