その30
「今回ばかりはねえ。ネイさんの暴走がなければもうちょっとどうにかなったわけだし。まあ、私服に着替えたいなら遅刻してきなさいと云う事で。主賓をこれ以上待たすのは流石の俺でも、ねえ」
苦笑しながらリオンは肩を竦めた。
「普段なら私も賛成するんだがね。今はちと、なあ」
難しい表情を浮かべながら、暁生は首を横に振る。「せめて、件の厄介事がなければ、な。……実際、無ければほぼ非番でこんな惨事にはならなかったわけだからなあ」
「……それを云われると辛いところなんだけどねえ。主賓がここで待つことになった理由がどれもこれも風紀委員会の幹部絡みという云い訳のしようが無い事実は間違いないワケだしなあ。信賞必罰の精神は必要だと思うんだが?」
真面目な顔付きでリオンは暁生に問い返した。
「……分かった分かった。お前さんの云う通りだな。まあ、この程度のペナルティで有耶無耶に出来るなら安い方か。後で変な追求が出てこないようにする為に悪役を買って出るとは、相変わらずダヴーさんに甘いな、リオン」
今までのリオンの言い分を素早く勘案し、真意を察した暁生は思わず破顔する。
「……さて、何のことやら。サン・シールちゃんをからかう為かも知れないのに、そんな深読みはしないで欲しいな。ま、あっちゃんの承認さえあれば、寮長も無下にはしないだろうし、こんなところで」
リオンはニコニコと笑いながら、ポンと手を打った。
口の端を上に動かしながら、暁生も一つ頷いて見せた。
そんな時、
「諸先輩方。準備万端整いました。今より、レクサール・デズモリア先輩の歓迎会を始めさせて戴きたく思います。御手数やも知れませぬが、大ホールまで来て戴ければ幸いです」
と、闇飛の声が館内放送を通じてロビーや玄関に響き渡る。
「さて、参るとしましょうか」
「参るかね」
軽やかにリオンと暁生は立ち上がり、
「それでは改めて。ようこそ、明星学園へ。我ら一同、君の転入を心より歓迎する」
と、申し合わせたかのように声をハモらせた。




