愛らぶSWEETS!
「ねぇ、これ余ったんだけど食べない?」
ふわりと風に煽られ、辺りに漂う甘い香り。
作りすぎちゃって、
そう申し訳なさそうに笑いながらソレを差し出す弥波とにやにやしている穂波の二人を見ていると断れる気にもなれず、秋哉はその箱を受け取った。
「おーい秋哉ー!!!」
辺りに響く、アルトボイス。
秋哉がその声のする方を振り向けば、髪を風に靡かせる少年が、走ってこちらへ向かってきていた。
「やっと追いついた!」
「あぁ、おはよう尚人。どうしたんだ?」
「どうしたって…、秋哉が一人で歩いてたから一緒にどうって誘おうとしたに気まってるじゃん!」
息を切らしつつも、秋哉に向かって無邪気な笑顔を向ける少年は尚人。尚人は仔犬のように人懐っこい笑みを浮かべるなり、ひょいと尚人の横に着く。
…自分よりほんの少しだけ背の低い尚人。
秋哉はそんな尚人を見ながら、まるで弟のようだなぁと頬を緩ました。
「なぁ秋哉。街中で一人何してんの?買い物?」
「いや、今日は司と遊ぶ予定なんだ。」
「あ、俺も!良い?」
「勿論。あ、いたいた」
ぼけーとしていた司を発見した秋哉はこれまた可愛らしい身長と容姿をしている彼を見てほっこりした。
「…なぁ、秋哉」
「ん?」
「さっきから気になってたんだけど…それ、何?」
特に当てもなくブラブラと歩き始めていた矢先。
いい匂いがする。
尚人はそう言うなり、秋哉が手に下げている袋を指差す。
司も出会った時から秋哉の提げていた袋が気になっていた。
「俺も気になってた。秋哉がそんな袋を持つなんて。それ、女物だろ?」
「幼なじみの双子にもらったんだけど、中身はわかんないんだよ。お菓子らしいんだけど」
「開けてみて開けてみて!」
「じゃあ、開けまーす」
パカ、
そんな音と共に可愛らしいタッパを開ければ、甘く香ばしい香りが辺りに広がった。
中には、バニラとチョコが市松模様になっているクッキー、星型で真ん中に飾りが乗せられたクッキー、シュガーパウダーが上品に散りばめられたココア味のパウンドケーキなどなど、美味しそうなお菓子が沢山。
「うわああ、美味しそう!」と目を輝かせる秋哉。しかしそれに反して、尚人と司は眉を潜めながら小さく声を上げた。
「?どうしたんだ」
「ぁ……ぃゃ……。」
「…秋哉、俺の分も食べていい、ぞ。」
視線を泳がせ、秋哉にお菓子を差し出す司。尚人も苦笑いをしながら、それを見つめる。
秋哉はそんな二人の行為が理解出来ないようで、少し険しい顔で頭に?マークを浮かべている。
「……………。」
「…………っ、」
秋哉がお菓子を食べている間、尚人と司は腕を組みながら、視線を泳がせていた。しかし秋哉が盛大にゴクリ、という唾を飲み込む音を鳴らしたことで、二人の視線が秋哉に集まる。
「?秋哉…?」
「………………。」
恥ずかしかったのだろう。
秋哉はほんのり頬を紅く染めた。
続けて尚人のお腹がぐううとなる。真っ赤になった尚人を見て、秋哉はため息をついた。
「…ねぇ。二人とも実は甘い物好きでしょ」
「!!!ゴフッ!!!」
唐突に切り出した秋哉の話題に、尚人と司は盛大にむせる。
「けほ、な、なっ…」
「分かるってば。すごい食べたそうじゃん」
「べ、別に…!!!」
「そ、そうだぞ、別にそんな…!!!」
「………………。」
必死に弁解する二人を、ふーんと白い目で見る秋哉。
「じゃあ全部食べちゃうね」そんなことを言いタッパーをしまおうとすると絶望的な顔をする二人に一言、
「じゃあ食べちゃえば?」しかしその提案には頑として首を縦にふらない。
「どうして?」
「だって…………かわいいって言われる」
「俺も……」
「はあ!?」
話をよくよく聞くと、どうやら二人はその可愛らしい見目のせいでよく可愛いと言われることが嫌だと言うのだ。
別に良くない?と言おうとしたが鋭すぎる目で睨まれ。
結局、業を煮やした秋哉の
「じゃあもう開き直って美味しいもの食べに行こう!もう君たち可愛いって言われるのと美味しいもの食べるのどっちが良いよ!」
という一言で、町一番のケーキ屋に行き止まらなくなった三人はアイス、ドーナツと梯子して次はケーキ食べ放題行こう!と意気投合してその日はお開きになった。
次の日見られていた三人がクラスの女子からお菓子攻めにされることを、三人の誰も知らない。