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雪の結晶  作者: さい
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思春期 二月(学校)1

 


 カリスマ性がある人間は、ある意味宿命の線路を歩いているのかもしれない。

ある程度決められた道を歩き、決められた言葉を周りが期待している。まるで人間の根本にその人物像が有るかのごとくである。

 実際その本人はそれを故意にやっているかどうかはわからない、もしかしたら先天性なのかもしれない、生まれながらに人の上に立つのを定められたのである。まぁ、自分自身に置き換えると肩の凝りそうな話なのは確かだが。

「眠そうに、美女の観察か?」

 前の席の小塚 武が声をかけてきた。

 今眺めているのは、同じクラスの小川 あかねである、クラスメイトと楽しく談話していた。容姿端麗で見るものすべての目を凝視させるような魅力がそこにあった。カリスマ性を持つ話は、あかねの事だ。

「そうか? そんなつもりはないんだが」

「いや、目で追っているのみえみえだぞ。俺もそうだし」

 武は今でも小躍りしそうに話した。自分にはその意図がわからない。

「それだったら、告白すればいいだろ?」

 中学三年はもうそろそろ終わりである。今は、正月過ぎた二月だ。恋人たちのイベントもそろそろだし、告白するには頃合のはずだが。

「俺には、恐れ多くてそんなことは出来ない。それに振られたときのショックで寝込むと考えると」

そうかい、そんなの怖くては、何も行動はできないはずだが、やる前から失敗を恐れてはチャンスをものにできないものと説教したい。

「それに告白して失敗すると、彼女とシコリがのこる気軽に話しかけられなくなる、そうなるなら現状維持が一番、違うか?」

 そう訊ねられても、自分は困る。

「だがな、武、もしあかねが誰かに告白されたら、お前はどうするつもりだ? まさか、身をもって、止めに入るわけじゃないだろうな」

 武は少し考えた。その間二秒ほどである。

「おいおい、非常識なことをするわけないだろ」

 するわけないだろねって、その二秒の間を訪ねてみたい。きっと少しは考えたのであろう。たぶん。

「じゃあ、お前の野望もそこまでの話だ。男なら強引に引きつけて押し倒すくらいの度胸がないと、奇麗事だと女性は付いていかないと思うぞ」

 自分は少々茶化すつもりで言った。ある意味そういう煮え切らないのは好きじゃない。相手に見合わないといって、何も進まなきゃ始まらないのだ。残念に終わったら終わったでもその結果もきっと本人にとってはプラスに働く、自分はそう思っている。

「できっか、そんなこと」

 この返しは、きっと武の煮え切らない態度の表れだろう。自分の目からみて武は結構いい男の分類に入る。押し倒すまでは犯罪になっても、本気でキスを迫るならきっと許してくれる女性は多々いるだろう、その割合は四割と考えてもいい。

(もったいないな、きっとあかねじゃなければ上手く行っていたのかもしれないな)

 そう思わず得なかった。上手くいかない恋は人の人生を狂わせ不幸にするそんなところだろう。

 なんとなく、不器用さが無ければなと言う印象が、武には付いてきている。

 二人で、それらの談義に集中していると、思わぬところから影がさしてきた。噂をすればと言うやつかもしれない。

「和馬と小塚くん、卒業旅行どこに行くかアンケート書いた?」

 優しい声だったが、ふと、その声が天から降ってきたような感じで正直自分は驚いた表情になった。今現在自分らの話の中心人物が話しかけてきたのである。話を聞かれた自分はそう思った。

「なぁ、今の話し聞こえていたか?」

 自分のその問いに、あかねはキョトンとした表情で自分らを見つめていた、武は聞こえていたと思ったのか表情が固まったままである、目の前の話の主役は軽く首を振った。

「ううん、なんの話していたの?」

 聞こえてなかったのか、この返しで自分はそう思った。そうしたのなら墓穴を掘った。あかねは答えを求める目でこっちをみた

「いや、まぁ、なんでもない、気にするな」

 普通の話し声で話したので、聞こえたと思ったのだが。自分は前の方を見た、武は相変わらず固まっている。

(こんな事で目の前の女性に自分の本心を伝わったなら、狼狽するのは当然か)

「ねぇ、あたしのこと?」

 本当は聞こえていたんじゃないだろうな、そのような問いである。

「違う、まぁ女の前では言えない話だ、わかるだろう」

 何も考えずに、この言葉を発したが、ベストな言い訳だ。思春期の男が話し合うネタには女子禁制のものは星の数ほどあるのだ。まぁ、逆もしかり。

「そう、いやらしい話ね」

 あかねは、なんとなく笑っており、こんな所でそんな話をするかというバカさ加減と、親しみを持った目で二人を見ていた、軽蔑色は感じられない。

「まぁ、公衆の場でそういう事はやめておいたほうがいいと思うけどね、あたしならともかくほかの人ならどう思うか」

 災難は去ったようだ。そしてオマケに説教された。だが、それだけで済んだ様で武も安堵の表情を浮かべている。

「ところで、さぁ、さぁ。早くアンケート、あとは二人だけなんだから」

 アンケートねっと思ったら、前の武と目を合わせた。二人とはうちらの事だろう。さて、どこに行方不明になったのか、そう思い机の中を見た。学校のプリント類は必要なだけ持って帰るが、自己記入のやつだけ学校に置いておく。いちいち持って帰って持ってくるのが面倒なのである。机の中をみると、一枚だけそれがあった。


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