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入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?  作者: teri


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7.やればできる子




 2日ほどで熱も下がり、体調が回復した純太は特に予定もなく、もらった長期休暇を持て余していた。

 

 鷹宮とルイは仕事に出掛け、今日は広い家にポツンと1人。合鍵をもらったので外出はできるのだが、「まだ本調子じゃないから無理をしないこと!」と朝から鷹宮に何度も念を押されたため、リビングにあるふかふかソファに座り、モフモフのクッションを相方に興味もないテレビ番組を眺めていた。

 ぼんやり過ごすのも悪くないとリラックスする傍ら、頭の片隅にある懸念が純太を不安にさせる。そう、放置してきた我が家のことである。


「掃除……洗濯……片付け……」


 社会人生活、忙しい毎日を過ごす中、洗濯くらいはこなしていたが、初めての一人暮らしで自分は絶望的に家事が出来ないと思い知り、部屋の惨状を思うと純太は頭が痛くなった。


「1回帰らなきゃな……」


 そう分かってはいるのだが次の日、また次の日と先延ばし、その間ルイと遊んだり、鷹宮にマンション備え付けのジムで鍛えてもらったり、最上階のスパに連れて行ってもらったりと、純太は高級ホテルで過ごすような日々を満喫。

 気が付けば1週間が経ち、残りの1週間もこのまま鷹宮家で過ごすことになった純太は、ようやく重い腰を上げて一度家に帰ることを決めた。


「お家の片付けに帰るの? なら午後からは時間あるし僕も手伝うよ」

「いいんですか? ありがとうございます!」


 綺麗好きな鷹宮が来てくれるなら心強いとウキウキで帰ったものの、部屋に積まれた段ボールの山と大量の洗濯物を前にして純太のテンションは一気に急降下。


(とりあえず、洗濯物しよ……)


 一番慣れていることからはじめようと、新しいゴミ袋に洗濯物を詰め込むと、サンタクロースのようにパンパンの袋を肩にかけ、近場のコインランドリーへ向かう。そして出来上がってきたフワフワの洗濯物を手に部屋へと戻ったはいいのだが……。


「洗ったものを片付ける場所が……ない!」


 クローゼットに掛けようにもハンガーは数個しかなく、衣類収納ケースもなければラックもない。

 部屋にあった洗濯物の山は、きれいな山へと進化を遂げたが、現状きた時と部屋の散らかり具合は変わらない。


(ど、どうすれば……)


 家事スキル1の純太、パニックの末にたどり着いたのは一番の悪手。それは、とりあえず段ボールを開けること。


「あっ……」


 その中に入っていたのは、今1番純太が触れてはいけないものだった。





 数時間後ーー





「お邪魔します、藤白くん片付けどう、か……な!?」


 邪魔者不在で純太と過ごせる時間に、若干ドキドキしていた鷹宮は、目の前に広がる光景に言葉を失う。

 片付けているはずの部屋の真ん中に、自分(正確には戦隊モノのキャラ)の祭壇が出来上がっていたからだ。しかも、それ以外の場所には服や物が散乱している。


「ふ、ふじしろくん?」

「あ、鷹宮さん! 見てください、さっき完成したんです」


 かっこいいでしょと語る純太の自慢気な表情が可愛くて許してしまいそうになるも、鷹宮は心を鬼にして冷静にダメ出しをする。


「うん、とっても素敵だけど、片付けはまだみたいだね」

「!」


 うっとりと眺めていた純太が、ハッと我に返る。


「あわわわ、すいません……。洗濯はしたんですけど、収納とかなくて……」

「うん、じゃあとりあえず洗濯物は畳もうね」

「はい」


 素直に畳み始めた純太を褒めたい衝動に駆られるもなんとか抑えて、鷹宮は部屋をグルリと見回す。


「何からすればいいか分からなくて、とりあえず段ボール開けちゃったんだね?」

「はい……」


 そこで見つけた大好きな戦隊グッズに心を奪われ祭壇作りが始まり、いらないものは床に投げ捨てられ現状に至った。そう鷹宮は把握すると、顎に手を置き考え込む。純太の家事スキルのなさは、一緒にいて鷹宮も感じてはいた。

 

(藤白くん、リンゴも剥けなかったからなぁ。それと好きなもの見つけちゃうと、尻尾フリフリで夢中になっちゃうんだよね。それがめっちゃ可愛いんだけど……)


 このまま一週間、可愛いからと甘やかしてしまうのが純太のためになるとは思えない。そんな彼を自分が躾けよう……いや、スキルアップさせようと鷹宮は思い至る。


「修行が必要だね」

「修行……ですか」

「ねぇ、藤白くんは僕の家どう思う?」

「広くて、片付いててめちゃくちゃ住みやすいです」

「そうだよね、実は僕が家事全般してるんだ」

「!!」 


 ホテル並みに綺麗な部屋の様子を思い出した純太は驚き唖然とする。そんな彼を見て鷹宮は真剣な表情を崩しかける。


「忍者みたいな、お手伝いさんがいるのかと思ってました……」

「に、忍者……ふふふ。部屋に部外者を入れてルイに変なことされたら困るからね」

「なるほど……あれ?」


 それでいうと自分も部外者なのでは? と思った純太の疑問を口に出させる隙を鷹宮は与えず、ニッコリと話し続ける。


「上京して、慣れない土地ではじまった1人暮らし。いきなり仕事も多忙になって、藤白くんはゆっくり家事を覚える暇もなかったよね?」

「…はい」

「でも、君はきっとやれば出来る子のはず!」

「本当ですか?!」

「あんなに頑張って初仕事もこなしたんだ大丈夫。今は家事のやり方を知らないだけだよ」

「……! 鷹宮さん。僕、がんばります!」

「うん、一緒に頑張ろう!」


 こうして折り返しの一週間、純太は家事スキル、生活力スキル、そしてたまにジムで肉体強化を鷹宮から教え込まれ、すべて真面目に取り組み、自炊、掃除、収納、少しの筋肉を無事手に入れることに成功した。



 休み明けの会社にて、一回り成長した純太の姿に先輩は拍手を送りながら思わず唸った。


「すごいね! うん、さすが鷹宮さんだ」

「え……それって」

「今ルイが売れてるのも鷹宮さんがすごい助力したって噂だよ~。そのレクチャーを受けられたなんてすごいことだよ!」

「そう、なんですね」


 先輩の言葉は純太の胸にチクリとトゲを刺した。


 鷹宮がしてくれたことは自分だけにじゃなかったと、ショックを受けている。そんな自惚れた自分も嫌で純太は頭の中がモヤモヤでいっぱいになり、その日はミスを連発した。



 

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