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入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?  作者: teri


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2/11

2.実は……?





 翌日、純太はどんよりと自分の席に座っていた。なぜなら朝礼で上司から、しばらく先輩が休むこと。そして各自に割り振った仕事をそのまま担当するように、と通達されたからだ。


「終わった…何からしたらいいんだ……」


 がっくりと(こうべ)を垂れていると、ザッ! と現れたのは昨日、純太を取り囲んだお姉さま方である。


「藤白くん、現場の仕事まだ知らないよね」

「私らがとりあえず実務はやるから」

「もちろん、見ながら覚えて欲しいけど」


「「「あなたは、とりあえず先方との窓口になればいいから」」」


「ま、窓口」

「そう、鷹宮さんのとこって女子はNGで、まず担当になれないのよ」

「あとミーハーな男もダメ!」

「だから、うちでは奥さん一筋の前任と、芸能関係に疎い藤白くんしか担当できないってわけ」

「な、なるほど!」


 こんな大仕事をペーペーの自分に何故任せるのか、純太の中で1番謎だった答えが、ようやく明かされるも、不安が解消されるわけではない。


「ていうか、昨日鷹宮さんから会社に電話あったらしいよ、藤白くんのこと褒めてたって」

「あーだから朝礼で部長の機嫌よかったんだー」

「部長もミーハーだから、鷹宮社長に会うの拒否られてるもんねぇ」

「そうなんですか?!」

「ていうか本当に興味ないのね。飛ぶ鳥を落とすルイの担当になったのに」


 自分からみたら厳格で厳しそうな部長にミーハーな一面があるとはつゆ知らず、驚嘆の声をあげた純太へ、驚く箇所がズレていると呆れた視線を送る女子たち。


「いや、昨日ルイさんはいらっしゃらなくて、でも社長さんからオーラはすごい感じました! 芸能人じゃないのに、めちゃくちゃかっこいいって思いましたよ!」


 そう言った純太の顔をじっと見つめた3人のお姉さま方は他にも色々知っているようだが、本当に何も知らなさそうな彼を見て、知らない方がいいこともあるかと無言で目配せし、静かにその場を去っていった。


 ポツンと置いていかれた純太は不思議そうにしながらも、サポートして貰えることに感謝しつつ、早速朝イチで送られていた鷹宮社長からのメールに目を通す。


「えーっと、今日の夕方に事務所にて……」


 どうやら昨日の資料で知りたいとこがあるので来て欲しいとのこと。電話でもいいのでは? となるところだが、先方からの要望には従うように! と周りから強く言われているので今日も事務所へと向かうことに。





「いらっしゃい藤白くん、今日はすぐに入ってきたね」

「あ、はい! 失礼します!」


 昨日と同じソファに案内されて着席すると、何故か今日は鷹宮社長が隣に座っている。さすがの純太もおかしいと気づいているが、相手の眩しすぎる笑顔を見ると何も言えない。


「資料のここね、具体的にどんな撮影になるのか気になってて」

「わかりました、付箋貼ってすぐ調べてきます!」


 そう言って早速帰ろうとした純太の肩を軽く抑えると、社長はニコリと微笑む。


「実は頂き物のお菓子があるんだけど、食べない?」

「え、いいんですか?」

「もちろん」


 今日もまた紅茶とお菓子を出してもらい、満面の笑みでモグモグしている純太の様子をじーっと見つめる鷹宮は、ほっこりとしていた。

(なんだか、わんちゃんに餌付けしてる気分だな……)


「ねぇ、藤白くんはどうしてこの仕事に?」

「あ、僕、実は戦隊ヒーローが好きで」

「へぇ」

「制作会社は面接落ちちゃったんですけど、調べたらうちの会社で毎年CM作ってることが判明して、就職した感じです」

「……そうなんだ、ちなみに好きなキャラとかいるの?」

「います!!!! 少し前の自分が大学の時にしてた『機械戦隊ハガネンジャー』っていうのがあったんですけど、その中で悪役から味方になるキャラがいるんです。顔が半分以上隠れてるんですけど俳優さんの声がめちゃくちゃかっこよくて、サクラさんっていう芸名の方なんですけど、それ以外全く出演作品がなくて、でもあの役はサクラさんあってのキャラだなって……あ、」


 実は戦隊ヒーローオタクの純太。戦隊のことになるとベラベラと話してしまう癖があり、大抵の場合はドン引きされて終了なのだが、いま隣にいるのが大切な取引の社長だったということを、話している途中で思い出し青ざめ、カタカタと震え始める。


「いや、うん。大丈夫だよ」

「うぅ、すいません」

「本当に大丈夫、すごく好きなの伝わってきて嬉しかったよ」

「嬉しかった?」

「あ、いや……藤白くん! 口の周りにお菓子ついてるから洗っておいで」

「えっ!? いってきます!!」


 純太の後ろ姿を見つめて、ふぅとため息をつく鷹宮の顔は少し赤い。何故なら彼の話していたサクラが自分だからである。

 鷹宮の本名は鷹宮クリストファー桜。なのだが現在の名刺は、あえて桜の名前は記載していない。


「まさかの戦隊オタ……しかもジャストで僕のしてた役好きとか……」


 純太が説明した通り、顔をほぼ出していない役だったため鷹宮がサクラだと純太は気づいていない。

 鷹宮自身、前の事務所ではクリスとして実は結構有名なモデルだったのは色んな人が知っているのだが、純太はそれさえも知らないだろう。


(前の事務所では、俳優としての仕事はイメージが変わるからって受けさせてもらえなかったからな。唯一顔出しNGの別名義で演じたのがアレだったわけだけど……)


「これはバレないようにした方がいいよね。じゃないと、態度も変わってしまうだろうし」


 今の純太を気に入っている鷹宮にとって、憧れの存在とバレるのはよくなかった。しかし声がかっこよかったとの情報は有効活用しようと思いニンマリとする。






「ご馳走様でした、資料の箇所すぐに調べてご連絡しますね」


 仕事をしに来たというより、お菓子を食べに来た純太がドアの前で元気よく挨拶をする。そんな可愛い彼の腕を掴み引き寄せ、鷹宮はいつもと違う声色で囁く。


「うん、『待ってるね』」

「っ!!!」


 不意打ちの声に、純太は腰が抜けるかと思ったがなんとか耐えて、後ずさりしながら失礼しましたと言って逃げるように事務所をあとにする。

その様子を見て笑いを堪えきれずに、鷹宮は口元を手で覆う。


「どうしよう、すごく可愛いかも……」



「ど、どうしよう……かっこいい声が、ずっと耳元でエコーしてる」



 何回も幻聴が聞こえる中、帰社して資料のところを調べあげ、抜かりなく鷹宮へメールを送信するも、気を抜くと先程の声が聞こえてきて奇声をあげそうになるのを堪える純太。

 ゲッソリ疲れながらも、なんとかその日の仕事を全て終えて帰宅すると、私用携帯に鷹宮から着信が入る。


「お疲れ様、早速調べてくれてありがとう」

「いえ!」

「丁寧に仕事してくれて助かるよ。撮影の日もよろしくね」

「はい、よろしくお願いします」

「じゃあ、『またね』」

「(また、あの声っ……!)はい、失礼、します」


 なんとか耐え切った純太は、電話を切ってその場にしゃがみ込む。


「ぼ、僕……変態かもしれない。こんなのバレたら担当外れる……でもそうなると担当できる人がいなくなる……」


 鷹宮が、わざと意地悪なことをしているとは思いもよらない純太は、モンモンとしたまま夜を明かし、最終的には「何も聞かなかった」という自己催眠で乗り切ることにした。


そして、あっという間に撮影当日を迎える。


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