第93話 ピュアカップル
Yukari's Bar&Diner。
シックな木目のカウンターと、温かみのある照明が灯る空間に、四人がいた。
バーカウンターの一角には、Yukariとミオ、そしてtomochanが並んで座っている。
少し離れたテーブル席には、もう一組──ピンクとブルーの髪色をした、中性的なアバターのカップルが仲良く向かい合っていた。
ふたりの髪は明らかに同じ作者によってデザインされており、衣装は男女のフォーマルを反転させたような対のコーディネート。
左手薬指には、それぞれ光沢のある指輪がきらりと輝いている。いかにも、熱々のカップルだった。
ピンク髪の彼女が、グラスを置いてくるりとこちらを振り返った。
「ミオちゃん、tomochanのこと甘やかしてあげてる?」
唐突な質問に、ミオは小さく首を傾ける。
ミオ「甘やかすの?tomochanとは仲良しだよ?」
ピンク髪の彼女は、椅子から半分立ち上がって、手を胸元で合わせた。
「キャッ!ミオちゃんピュア!まぶしい!」
それを見て、ブルー髪の彼氏もにっこりと微笑む。
「お互いに甘やかし合うと、幸せになるんだよ」
ふたりは、完璧に呼吸を合わせて言った。
「ねー!」
ピンク髪の彼女は手をひらひらさせながら続ける。
「膝枕して、なでなでしてあげて」
ブルー髪の彼氏も優しい声で応じる。
「その後、VR睡眠しながら寝落ちするまでお話するのもいいよ」
ミオは、ふむふむ、と目を細めてうなずく。
まるで本当にノートに書き留めているような仕草だった。
その横で、tomochanは耳まで真っ赤になっていた。
伏し目がちにグラスを指でいじっている。
それを見て、ピンク髪の彼女がまた嬉しそうに笑う。
「tomochanもピュア!かわいい!」
カウンター越しに様子を見ていたYukariが、グラスを置き、ミオにやさしく声をかける。
Yukari「ミオちゃん…ほどほどにね?」
ミオは小さく首を傾げた。
Yukari(大丈夫かしら…)
──照明の柔らかい空間に、笑い声と氷の音が溶けていった。
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