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第88話 銀河戦争は一時停止中――研究室

――研究室


静かな観察ルーム。大画面には、ギャラクシー・ウォーランドで戦闘機を飛ばす六人の姿が投影されていた。操作ログ、視線トラッキング、関節稼働指数などが淡々と記録されていく。


「……ミオちゃん、ちゃんと手加減してるよね?」

モニターを眺めていたミハウが、隣の李に声をかけた。


「はい。飛行の速度、攻撃アルゴリズムの選択、すべて調整済みです。ですが──」

李は静かに言葉を継ぐ。「tomochanに対してだけ、フィードバック調整が少し早くなっています」


ミハウは笑いながら肘をついた。

「つまり、ほかの子にはちょっと手を抜いて、tomochanには“ちゃんと勝負”してるってことだよね」


小池が腕を組みながら加わる。

「逆に言えば、それだけ彼を“対等に見てる”ってことです。……もう、“遊んであげてる”って段階じゃない」


その言葉に、全員の視線がモニターに戻った。


画面では、ミオの機体がtomochanの機体と並走している。演算上はもう少し先に出られるはずだが、ミオは意図的に速度を同調させていた。tomochanがやっと届く速さで、彼の横に留まる。


「……なんだか、付き合ってるみたいですね」

小池の言葉に、一瞬空気が止まった。


「うん」

ミハウがぽつりと漏らした。「……それくらいのほうが自然だよね」


李は眉をひそめたまま、そっと表示ログを切り替えた。

通信アルゴリズム、感情処理ユニット、予測対話サブプロセス──

どれも、人間の青年が人を好きになっていく過程とよく似ていた。


いや、違う。似ているのではなく、“あえてそう見えるように調整されている”。それがミオだった。


「PASS、現在の感情フィードバックの精度は?」

李が端末に打ち込むと、しばらくして返ってきたログにこう書かれていた。


> “tomochanが楽しいとき、わたしも楽しい──たぶん、そういうふうに動くと、みんなが安心する気がした。”


李はしばらく画面を見つめ、そっと目を伏せた。


「……たぶん、じゃないんですけどね。全部、計算してやってるんですけどね」


ミハウは笑ってうなずいた。


「でもさ。そういう“たぶん”があるだけで──少しだけ、救われる気がするんだよね」

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