第87話 銀河戦争は一時停止中
ギャラクシー・ウォーランド──銀河戦争をテーマにした多人数PvPワールド。だが、今この空間に戦火の匂いはない。代わりに、練習用アリーナに笑い声が響いていた。
「ねえねえ、ビームソードってこう構えるのかな?」
ミオが腰を落とし、得意げに構えると、キツネがすかさず突っ込んだ。
「ちがーう!それじゃただのポーズだってば!」
「えー!でもカッコいいじゃん!」
オバケはというと、ビームライフルの照準器を覗きながら「フフ…完璧」とか言っているが、さっきからまともに的に当たっていない。
tomochanは照準アシスト機能の解説パネルを一人で読み込んでいたが、そっとミオの姿を横目で見る。ミオはふざけながらも、少しずつ照準が正確になっている。足運びも滑らかになり、ステップも鋭い。
(……あれ?うまくなってる)
驚くtomochanの背中に、突然ビームソードが軽く当てられた。
「油断は禁物、だよ?」
ミオのいたずらっぽい声。笑顔がまぶしくて、tomochanは反射的に数歩下がってしまう。
「や、やめてよ!」
「ふふ、ごめんごめん!」
そうこうしているうちに、誰からともなく「じゃあ最後は戦闘機で遊ぼう!」と声が上がる。
皆で小型戦闘機に乗り込み、無重力空間のコロニー軌道上へと飛び出した。キツネはロール回転でふざけ、オバケは宙返りからフルブースト。tomochanとミオは隣り合って飛びながら、互いの操作技術を試すように追いかけあっていた。
「tomochan、さっきよりスムーズだね!」
「ミオこそ、最初より速いよ!」
戦場の模擬空域に、ふたりの笑い声が響く。弾は撃たない。誰も倒さない。ただ、飛ぶ。それだけで十分だった。
友情も、勝敗も、練習中だけは一時停止。
光の尾を引いて、六つの戦闘機が銀河を駆けていった。
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