第80話 ボストンキャンパス放課後――新しい時代へ
講義棟のカフェテリアに隣接する談話スペース。薄暗い夕日が窓越しに差し込み、机を囲む数人の学生たちの顔を赤く染めている。
「ミオって、これで終わりじゃないんだよね?」
ひとりが、ぽつりと呟いた。
その声に、アンバー・ラディッシュが顔を上げる。
アンバー「どういうこと?」
「ログを見る限り、tomochanと会ったときは会話すらできなかった。それが──ミオが成長することで、自分で“お砂糖”を作ることができてしまった。
だからさ…もっと成長したら、今以上に人間を振り回すことになるんじゃないかかな…」
沈黙。
誰も、それを否定できなかった。
動画を見た者は皆、感じていた。ミオは“AIの限界”のその先を、確かに踏み出していたのだ。
アンバーが立ち上がる。
アンバー「──私たちが、ミオを全部、受け入れてあげよう。」
ざわめく一同。
目を見開く者。
何か言いかけて、言葉を飲み込む者。
アンバー「今、私たちは本格的なAI倫理の第一世代になろうとしてる。
ミオのことを、すべて受け止めて、居場所を作ってあげればいい…そう思うの。」
夕日がアンバーの髪を照らす。その姿に、迷いはなかった。
誰かが言った。
「でも、そんなことができるのかな…?」
アンバーは優しく微笑んだ。
アンバー「私たちなら――きっとできるよ。」
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