表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/201

第73話 学長ジャン=ルイ・ド・ヴァレール

スタンバード東京キャンパス校長室

高い天井、直線と曲線が静かに交差するモダンな内装。

窓からは、午後の陽光が薄いレース越しに射していた。部屋の中央、黒檀の古風なデスクの奥に、ひとりの男が静かに座っている。


ジャン=ルイ・ド・ヴァレール。

フランス人らしい端正な顔立ちに、わずかに灰がかった髪。

ボタンの留まらないグレージャケットに、ペン先で何度も裏紙に線を引きながら、彼は考えていた。

机の隅にはラヴェルの楽譜が無造作に置かれ、ティーカップには冷めかけのダージリン。

背後の棚には、フランス語の専門書と、パリで撮られた古い学生時代の写真が並ぶ。


デスクの前に立つのは、エリス教授。

背筋を伸ばし、何も語らない沈黙の中に、尊敬と緊張が同居している。


ヴァレール「規制は避けられんかもしれんね」


静かな口調だった。机の端を指先でたたきながら、彼は壁の時針に目を向ける。


エリス「はい、東京だからミオという存在が作られたのです。これから…AI倫理の第一線に我々は立つことになる」


ヴァレール「その時は私が神の元に宣誓することにしよう…」


彼は冗談のように笑ったが、その目は冴えていた。

笑いの中に宿る、冷えた覚悟。

彼は自らが米国議会に呼び出されることも覚悟していた。


ヴァレール「それで?プロジェクトのメンバーにはなんとフォローしたのかね?」


エリス「何も。非難の第一線に立つのは我々だけでいい。彼らはこれから観察者として葛藤していくのですから。それだけで大きな重責です」


ヴァレールは小さく笑った。

その笑みは、どこか少年のようなものでもあり、また老練な外交官のようでもあった。


ヴァレール「いい答えだ。君もずいぶん、学者らしくなったじゃないか、エリス」


部屋には再び、静寂が戻る。

外の木々が、風にざわめいた。

↓↓より「ポイントを入れて作者を応援しよう!」や「ブックマークを追加」を入れると作者がゴキゲンになります。応援してもらえると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ