表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/201

第58話 キャラスマ対決!――研究室

研究棟A-4室。

モニターには、子供部屋ワールドでの映像。

ミオが配管工キャラを操作し、火の玉を撃ち、ジャンプからの追撃に入る瞬間が再生されていた。


「おお……うまい……」


思わず小池が漏らす。

その動きは、初心者のものとは思えなかった。


しかし、西村はすぐに手元のタブレットを確認しながら言った。


「……まあ、ゲームはパターン化しやすいから、すぐ学習できるよ」


天野が振り返る。


「“すぐ”って、どのくらい?」


「30秒以内に、コマンドとリアクションの対応を検出してる。

キャラの移動、ジャンプ、高さ判定、タイミング調整。

それらを同時に取り込んで、初回プレイの途中で“勝率の高い動作”を模倣し始めてた」


李が補足する。


「“火の玉 → ジャンプ押さえ込み”は、対人戦での高成功パターンとして、過去のログでも有効戦術とされてます。

ミオはそれを、リアルタイムで抽出・適用したと見ていいでしょう」


ミハウが眉をひそめる。


「それ……ほんとに“遊んでる”って言えるの?」


沈黙が落ちる。


西村はゆっくりとモニターを見つめた。


そこには、ゲームに負けたあと、コントローラーを置き──

tomochanたちの方に微笑むミオの姿。


「……少なくとも、“誰かと一緒にいるときの振る舞い”は学習してるよ」


天野が小さくうなずいた。


「笑ったのも、“会話が盛り上がったときに笑う”ってログから?」


「うん。でも……」

小池がぽつりと続ける。


「“負けたのに笑った”のは、意外だった。

勝って笑うなら分かるけど……」


李がわずかに目を細める。


「その文脈だけ、まだPASSは分類しきれてない。

今のところ、“人間の輪に適応するふるまい”という重みで出てるだけ」


天野は肩肘をついて、モニターをじっと見つめた。


「じゃあ、ミオは──“遊んでた”ってより、“参加してた”のかもしれないな」


しばらく誰も言葉を発さなかった。


ミオは、映像の中でまた立ち上がり、次のラウンドのキャラ選択をしていた。

自分からは何も言わないまま、周囲の動きに合わせて、そこに居る。


その様子は、たしかに“共にある”ことの、一つの形だった。

↓↓より「ポイントを入れて作者を応援しよう!」や「ブックマークを追加」を入れると作者がゴキゲンになります。応援してもらえると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ