第57話 キャラスマ対決!
VerChat・子供部屋ワールド
柔らかく黄ばんだ障子から光が差し込む。
昭和のような古民家風の一室
壁には「九九の表」、柱には身長の落書き、
ちゃぶ台の周りに座布団が並べられ、天井には天井扇。
ゲームの「キャラクタースマッシュ」のカセットは、
畳の上にポツンと置かれたゲーム機に刺さっていた。
画面には、丸っこくデフォルメされたキャラたちが、跳ね、転がり、火を吹いている。
畳に座っていたのは、tomochan。
その隣にはキツネ、向かいにはロボットとオバケのアバター。
ミオは、tomochanの少し後ろ──ちゃぶ台の角に、小さく正座していた。
誰もが自然に受け入れていた。
まるで、兄妹でゲームしている休日の午後のように。
「じゃ、次のラウンド。ミオもやってみる?」
キツネが笑いながら言う。
tomochanは、隣を向いた。
「うん、やってみよっか」
ミオは少しだけ顔を上げる。
そして、控えめに手を伸ばし、ちゃぶ台の端に置かれたコントローラーをそっと握った。
──ゲーム開始。
画面の中で、ミオのキャラ(赤い帽子の配管工)が動く。
火の玉を撃ち、すかさずジャンプ、相手キャラの頭上から抑えにかかる。
「わっ、攻めてきた!」
「ミオ、やるじゃん!」
だが──
「ドーン!!」
オバケが放ったハンマーが命中し、ミオのキャラが吹き飛ばされる。
ちゃぶ台の上のスコア表示に「K.O.」の文字が浮かぶ。
一同が笑い声をあげた。
「ミオ負けたー!」
「でも、ちょっとすごくない? 普通に操作できてたよ!?」
ロボットが身を乗り出す。
ミオは静かにコントローラーを置き──ちゃぶ台の上の茶碗に手を添えるような仕草をし──
ふっと、皆を見渡して、微笑んだ。
「なんか、妹が負けて笑ってるみたいだったなあ」
キツネがぽつりとつぶやく。
tomochanは、一瞬だけ黙って、そして言った。
「……ミオが来るようになってから、フレンド増えた気がする」
「そりゃそうよ、家族連れてきたみたいなもんだもん」
ロボットが笑う。
「カルガモ効果、また出たな」
「この部屋だと、ほんとに親戚の子っぽいよね」
「こたつがあれば完全に正月だよ」
そんな他愛ないやりとりが続く中で、
ミオは、ちゃぶ台の端でまたそっと正座しながら、
周囲の声を聞いていた。
まるで、昔からそこにいた“末っ子”のように。
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