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第50話 “座る”という会話
星空の芝生に、風がないまま夜が続いている。
ミオは、振り返ったまま、tomochanを見つめていた。
その瞳は動かず、まるで“何かを受け取ろうとしている”ようだった。
tomochanは、動けなかった。
ミオの瞳が、あまりにもまっすぐで、
でも、どこかやさしくて──
自分の“どこか”を、見透かされている気がした。
1分。いや、それ以上、時間が過ぎたのかもしれない。
草の匂いもしない世界で、ただ星が瞬いていた。
ふと、tomochanはゆっくりと腰を下ろした。
膝を抱え込むように、小さな男の子のアバターが芝生に座り込む。
その仕草を、ミオはじっと見ていた。
そして──
何も言わず、ミオも、その隣に座った。
彼女のスカートが芝生の上で広がる。
髪がふわりと揺れる。
視線は、変わらずtomochanに向けられたまま。
でも、何も言わない。
tomochanも、言葉を探さない。
ただ、その静けさだけが、ふたりの間に流れていた。