第4話 ミハウ・ノヴァク
西村は腕を組んで、半ば呆れたように言った。
「今日は変な奴にしか会ってないな……」
──その瞬間、ドアが勢いよく開いた。
「コンニチワー!ミオちゃん作りに来たよー!」
声の主は、振り袖を着た男だった。
さらりとした金髪、明るい笑顔。
そして透明なウエストポーチには、おにぎりとペットボトルのお茶がぎっしり詰まっていた。
「……のわあっ!」
西村が後ろによろける。
「驚かせてしまったね」
男は気にする様子もなく、部屋にすっと入ってきた。
「モーションを作るために振り袖を着たんだけど、
一度着ると脱ぐのが大変だからね!」
一同が呆然とする中、小池だけが声を上げた。
「……3Dモーション職人で、ウエストポーチに入れるほど、おにぎり愛好家……
まさか!あの有名ボカロ3Dで日本桜を動かした…ミハウ・ノヴァクさん!?」
「それほどでもないよー」
ミハウは手をひらひら振って、天野のカバンに視線を落とした。
「おっ、キミ、SUMIちゃん好きなの?キュートだよねぇ!」
「え!嬉しい!」
小池がすかさず前に出る。
「それを作った人が、ここに居ます!」
得意げに、自らの鼻の下を指さす小池。
ミハウは一瞬ポカンとしたあと、目を輝かせて手を叩いた。
「ウウウーわ!私、ファンだったんですよ!
あの瞬きのタイミングとか、パラメータ再現しても絶対ズレるのに、自然すぎて……!」
「ありがと〜!分かってくれる人初めて会ったかも!」
「今日からもう、推しと一緒に仕事できる生活だ!アメージング!」
二人はあっという間に盛り上がり始めた。
推しの細かいパラメータ話、アイドル衣装の揺れ方、骨構造の見せ方まで脱線しながら延々と語り合っている。
天野はそれを見て、ぽつりと呟いた。
「……もう、なんかこのチーム、すごいね」
西村は肩をすくめて言った。
「いや、俺の“変人センサー”が壊れるレベルだぞ、これ」
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