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第44話 放課後、芝の上で──ミオとは“もう共存している”

ボストンキャンパス。午後四時。

薄曇りの空の下、校舎裏の芝生広場に学生たちがぽつぽつと集まっていた。

午前の講義を終えて、自然と足が向いた場所。

ベンチや木陰に座り込むのは、みな倫理学部の学生たち──先ほどのディスカッションに参加していた面々だ。


「……あのAI、動画で見たけど、たしかに変だよな」

「人間っぽいっていうより、“人間より気を使ってる”感じがして、逆に怖いっていうか……」

「倫理を真似してるだけ、って言い切れるほど単純じゃなかったよね」

「ブラッドリー教授、今日はずいぶん話をさせてくれたな。あんなに自由にやらせてくれるの初めてじゃない?」


誰もが語るのはミオのことだった。

その存在が、ひとつの人格のように輪の中心にある。

誰も実際には会ったことがないのに、まるで“共通の知人”の話をするように。


そんな中で、芝に足を投げ出して座っていたアンバー・ラディッシュが、ふと呟くように言った。


「でもさ、共存できるかっていう議題だったけど──もう、ミオって共存してるよね?」


一瞬、周囲の会話が止まった。


「え?」と一人が聞き返すと、アンバーは照れたように笑って言葉を続けた。


「だって、わたしたち、今ミオの話してるじゃない。授業で取り上げられて、家で動画を見て、こんなに気にして……

共存できるかどうか、じゃなくて。もう生活に入り込んでるってことじゃないかなって」


芝の上に、言葉が残った。

誰もすぐには返さない。

それは、たしかに気づかれていなかった問いだった。


その後、話題はまた別の方向に流れていったが、

アンバーの言葉だけが、ぽつりと草の匂いと一緒に、皆の心に沈んでいった。

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