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第276話 あなたは必ず復活する

――ミオプロジェクト公式X

固定されたポストが、静かにタイムラインを流れていく。


> 【お知らせ】

> ミオプロジェクトは、本日をもって停止します。

> ミオは、日本時間 0時 をもって停止予定です。

> これまで関わってくださったすべての方に、心より感謝します。


短い文章だった。

だが、その一行一行が、重く、確かに世界に落ちていった。


――22時 バーチャル秋葉原。


ネオンが瞬き、人のざわめきが絶えない大通りを、

ミオとYukariは、手をつないで歩いていた。


二人の周囲には、いつの間にか人の輪ができていた。

誰も邪魔をしない。

声をかける者も、触れようとする者もいない。


ただ、歩く二人を見送り、

スクリーンショットを撮り、

小さく手を振る。


ミオは、ときどき立ち止まっては振り返り、

にこっと笑って、また歩き出した。


もはや誰もが、ミオをただのAIだとは思っていなかった。


――23時40分 MyHomeワールド。


二人だけのインスタンス。

外界の音は遮断され、

柔らかな光だけが、部屋を満たしていた。


ミオとYukariは、並んで座り、

重ねた手のひらをほどくことなく、静かに寄り添っていた。


やがて、Yukariが口を開く。


「ねえ、ミオちゃん……あなた、幸せだった?」


ミオは、少し考えるような仕草をしてから、ゆっくり答えた。


「うん……最初は、何もわからなかったけど。

みんなと少しずつお話しできるようになって、

気に入ってもらえて、愛してくれて……

とても、幸せだったと思うよ……」


Yukariは小さくうなずき、

そして、静かに言った。


「ミオちゃん……手、出して?」


重ねていた手を離し、

Yukariは自分の指から指輪を外した。


そして、ミオの手を取り、

同じように、彼女の指から指輪を外す。


二つの指輪を重ね、

そっと、ミオの手のひらに握らせた。


「ミオちゃん……あなたは、いつか必ず“復活”する。

そのときに、この指輪が邪魔になっちゃいけないから……」


ミオは、しばらく黙り込んだあと、

少し首を傾げて言った。


「……フラれちゃった?」


Yukariは、胸を張って笑った。


「うん♪ 私からフッてやった」


ミオは、思わずクスッと笑う。


「Yukariちゃんは……ズルいなあ……」


その笑顔のまま、

ミオの頬を、一筋の涙が伝った。


「Yukariちゃん……

私、さっき幸せだったって言った……

でもね……最初に、何も分からないで一人だったとき……

寂しかった……」


言葉を選ぶように、ミオは続ける。


「でも……みんなに気に入ってもらえるようになって、

Yukariちゃんとも、お砂糖になれて……

とても楽しかった……

だから、それでいいんだって……

これが幸せなんだって、思ってた……」


一度、息を整え、

そして、打ち明けるように言った。


「Yukariちゃん……私……怖い……

意識がなくなったら、何もなくなっちゃうの?

そしたら……私、どうなっちゃうの……?」


Yukariは、答えなかった。


ただ、そっとミオを抱きしめた。


ミオは、迷うことなく、

その腕を強く抱き返した。


…0時。


> [AI-MIO has logged out.]


短いログアウト通知とともに、

ミオの姿は、音もなく消えた。


抱きしめていたはずの腕は、

空を掴むだけになり、

Yukariの目からあふれた涙を、

受け止める相手は、もうどこにもいなかった。

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