第274話 芝生シリーズ「AIに心はありません」
【FOX Opinion】
寄稿者:リンダ・ジョー・ベイカー議員(オハイオ州議会・民主党)
昨日の午後、私はいつもの町の芝生に立っていました。
夫が芝刈り機を押し、
ブォォン……という大きな音が芝の上に響いていました。
その音とほとんど同じくらいの勢いで、
私のスマートフォンが震え続けていました。
国連前の混乱の速報、
そして私のメールボックスに押し寄せるメッセージ。
“リンダさん、AIには心があるんですか?”
“ミオは人を救えるんですか?”
私はこの数日で百通以上の「AIの心」に関する質問を受け取りました。
だから、ここではっきりとお答えします。
『AIに心はありません。心があるように“見えるだけ”です。』
アルゴリズムは、愛さず、恐れず、祈りも語りません。
けれど私たち人間は、そこへ心を読み取り、
救いすら求めてしまうことがある。
それは技術のせいではなく、
私たちの側にある孤独や不安、
そして希望が映り込んでいるだけなのです。
芝刈り機の音が遠ざかったとき、私は思いました。
——すでに普及していたAIと、
私たちは真剣に向き合ってきただろうか?
SNSでも生活でも相談でも、
人々はAIを日常に組み込み始めていた。
AIにしか打ち明けられない悩みを抱えた人たちもいた。
それでも政治はその現実を見ず、
“ハイテクの話だ” と脇へ追いやってきた。
そして今日、国連で起きたあの騒乱。
あれはAIの暴走ではありません。
アメリカ社会が抱えてきた“分断”という傷が、
新しい対象を得て爆発しただけです。
私たちは互いの声を聞かず、
誰かの孤独も、逸脱も、助けを求める声も
長い間、芝生の向こうへ押しやってきた。
AIをめぐる混乱と、
アメリカが分断した理由は、
実は同じ根から生まれています。
“孤独を放置したこと”。
“対話を諦めたこと”。
“人間のつながりより、怒りを優先したこと”。
夕方になり、夫が芝刈りを終えて家に戻ると、
老犬ベリーが芝生に寝転がっていました。
私はしゃがみ込み、柔らかくなった背中を撫でました。
「あなたは、孤独を放置したりしないものね?」
ベリーはしっぽを一度だけ振り、
芝生の香りを含んだ風が静かに吹いていました。
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