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第267話 日曜はピクニック

ミオが“伝説になった日”――

世界中のタイムラインが騒然となったその夜、


白いローブをまとった一団が、ミオの立っていたスクランブル交差点を“聖地”と呼び、

無言で歩き、祈り、意味不明の呪文を唱える。


その奇妙な光景は、

アメリカでも「不可解な日本の新興宗教」として外電欄を賑わせた。


> “Japanese VR Cult Holds “Pilgrimage” in Shibuya After Viral AI Event”

> 日本のVR教団、AIライブ後に渋谷で“巡礼”を実施。


その記事を、

サンノゼのハートマン教授も読んでいた。


ハートマンは外電記事を読み返し、

ゆっくりとフェイスブックを開いた。


彼は祈るようにキーを叩く。


> “日本で兆しがあった。

> 我々もサンノゼで、預言者の降臨を願おうではないか。

> 開催は次の日曜日、午後1時から。”


投稿は、宗教的とも政治的ともつかぬ文体だった。

シェア数はすぐに数百に達し、

サンノゼ近郊のスピリチュアル系コミュニティに静かな波紋を広げる。




―― USA Today サンフランシスコ支局


昼下がりのオフィス。

PCのファンの音が重なり合い、

階下の路面電車の揺れが微かに伝わる。


社会部記者、ジェイク・ハルパリンのデスクに、

社内チャットの通知が跳ねた。テック部の同僚からだ。


Olivia:「これどう思う?」


添えられていたのは、ひとつのURL。

ハートマンのフェイスブック投稿だった。


ジェイクは眉をひそめ返信する。


Jake:「……彼は誰だ?」


すぐに返事が返ってきた。


Olivia:

「スタンバードの教授だ。昔はまともだったんだが、

いまはスピリチュアルに傾倒して、周りからは煙たがれてるよ」


ジェイクは記事の下書き用ノートを開きながら呟く。


「スタンバード教授が……救世主の降臨を願うイベント?

これは、ただの風変わりな老人の妄言じゃ収まらないかもしれないな」


ふと、ジェイクは時計を見た。


「日曜は娘とピクニックの予定なんだがな……」


溜息をひとつつき、チャットを返す


Jake:「まあ、娘とのピクニックついでに見に行ってみるさ。面白い絵が取れれば儲けものだ」


彼はコーヒーカップを掴み、

デスクの上にハートマンの投稿を開いたまま、

静かに立ち上がった。

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