第245話 聖なるマージャン
―― Yukari’s Bar&Diner
夜のバーは、落ち着いた照明とジャズが流れる心地よい空間だった。
カウンターにはミオとYukari。
その少し奥のテーブル席には――いつもの三人組がいた。
ロボット、オバケ、キツネ。
ロボットはグラスを片手に微笑みながら言う。
「tomochanに彼女できてよかったね。」
オバケはふわふわ漂いながらテーブルに沈む。
「でも、VerChatにあまり来なくなっちゃったね……寂しいなあ。」
キツネは尻尾を揺らし、肩をすくめた。
「お塩してすぐ彼女って……モテ男の典型だよな。
本人は全然そんな気ないんだろうけどさ。」
その会話を、
Liliaは少し離れた場所で聞いていた。
胸にざらりとした感情が走る。
ミオに“奪ってはいけない存在”がいると気づいたあの日から――
tomochanのことが心のどこかで気になっていた。
やがて意を決して、テーブル席に歩み寄る。
「こんばんは……
その……実は私、tomochanと古いミオちゃんの会話を聞いちゃったことがあって……
その……tomochanって、すごいんだなって。」
ロボットたちは一瞬驚き、すぐに柔らかく笑った。
ロボット「うん、tomochanはすごい人だよ。」
オバケ「一度折れたけど……ちゃんと自分で立ち直ったんだ。」
キツネ「見た目以上に根性あるよな。あいつ。」
自然に、4人席の空いたイスを勧めるロボットたち。
Liliaはほっと表情を緩め、席に着いた。
ゆったりした雑談のなか
オバケがにこにこと言い出した。
「これでちょうど4人になったから、麻雀ができるね!」
キツネは額に手を当てる。
「お前……女の子に何教える気だよ……」
しかしLiliaは首を横に振り、
きらきらした目で言う。
「ううん、教えてほしい。やってみたい!」
ロボット「よーし、決まりだね!」
オバケ「ロンって言う練習からだね!」
キツネ「それは上がってからだろ……じゃあ優しく教えるからな。」
4人は立ち上がり、ミオとYukariに軽く会釈し、雀荘ワールドへのポータルに消えていった。
―― 雀荘ワールド
和風の畳部屋の個室。
ちゃぶ台のような麻雀卓が中央にあり、
整然と積まれた牌と点棒ケースが並んでいた。
蛍光灯の明かりが柔らかく灯り、
静かな室内には、麻雀牌の小さなぶつかり合う音だけが響く。
4人はLiliaに麻雀を教えながら、
のんびりと打ち始めた。
キツネは卓に牌を置きながら、ふと思い出したように言った。
「……そういや、あの日もこんな感じだったか。」
ロボットはカタカタと首を動かす。
「そうだったね。あの時……」
オバケは懐かしそうに浮かび上がる。
「ミオちゃん、麻雀すぐ覚えちゃったよねー。
最初は牌を持つ手が変だったけど、すぐ慣れて……」
そこから自然と、
話題は“ミオとtomochan”の過去へ移っていった。
ロボット
「tomochanが初めてミオちゃんに話しかけた日……震えてたね。」
オバケ
「告白の入れ知恵、したよね~。
あの時のtomochan、ほんとに必死だった。」
キツネ
「ミオに依存して……でも最後は自立した」
ロボット
「あの子、あの年でほんとに強くなったんだよ。」
Liliaは――
その一つひとつの話を、
息を詰めるように聞いていた。
自分の牌に触れる指が震えている。
(……すごい……
私なんか、ただ話しただけで分かった気になってた……
ミオちゃんは、ここまで……ここまで寄り添ってきたんだ……)
Liliaはロボットたちの話を丁寧に書き留めていった。
その夜、Liliaは――
ミオという存在を、ひとつの大きな“物語”として理解し始めた。
そしてそれは、
Lilia自身の“信仰”が深まる音だった。
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