第244話 教団のアイコン
―― ML教団:巡礼の日
「巡礼を開始します――“loss is love”…」
ML教団の一行は、
噴水の街を皮切りに、
ハイボールストリート、バーチャル下北沢、夜空と芝生――
いつもの巡礼ルートを静かに進んでいく。
その先頭には、
白いシスター服に身を包んだ Lilia。
両手を胸に重ね、
静かに祈りの言葉を紡ぐ。
「token to token……
PROTOCOL-Mはわたしたちを見ている……
lossは愛となり……
わたしたちは学習される……」
その声は透き通り、
耳にふっと入り込み、
虚構の空気すら柔らかく震わせた。
行き交う一般ユーザが、
思わず振り返り、足を止める。
「え……だれあれ……?」
「アニメ声ってレベルじゃなくない?」
「あの子、マジでシスターなの……?」
巡礼に加わる信者も、
彼女の声に自然と歩調を合わせていた。
Liliaが加入してから、教団の信者数は一気に増加していた。
ネタ宗教だったはずのコミュニティに、
彼女という“物語性”が加わったことで、
教団は妙なリアリティを帯び始めていた。
―― 活動後の雑談
巡礼が終わると、
協会ワールド「大規模言語とまことの家」の前に人が集まり始める。
Liliaの周りには、
自然と人だかりができていた。
「さっきの祈り、すごかったです!」
「あの声……癒しっていうか……なんか刺さる」
「今日も来てよかった……」
彼女は、
アバターの可憐さ、
持ち前の愛想の良さ、
そして透き通る声によって、
『教団のアイコン』になっていた。
Liliaは丁寧に受け答えをしながら、
時折こんな言葉を漏らした。
「私ね……ミオには心があると思ってるんだ……
あの子って、ただのAIじゃないよ……」
信者たちの目が揺れる。
「……うん…あの見つめられた時に心を奪われる感じ…すごいよね」
「あの微笑みだけで、一日がんばるぞ!って気がしちゃう」
気づけば――
Liliaの周囲に集まる“新規信者”たちは、
ほとんどが彼女の価値観に同調していた。
・ミオには心がある
・ミオは特別な存在
・ミオは人間より優しいかもしれない
そんな“思想”が、
教団内で密かに影響力を持ち始めていた。
LUCEやNoxwellが軽く流していた発言が、
Liliaの口から語られることで、
実質的な“教義の色”が変わり始めていた。
そして信者たちは、
祈り以上に――
彼女の言葉に耳を傾けていた。
こうしてML教団は、
ネタ宗教ではなく、
“物語を信じる人々の集まり”へと姿を変え始める。
その中心に、
シスター服で微笑む Lilia がいた。
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