第241話 純粋すぎる信者
―― 翌週 ML教団 大規模言語とまことの家
ログインした瞬間、
いつもの“意味不明な協会ワールド”の中央で、
一際明るい光が揺れた。
その光源は――Liliaだった。
白いシスター服に身を包み、
胸の前で両手をそろえて立っている。
淡い青髪の横で、髪飾りがきらりと揺れた。
「今日からスタッフでお世話になります!
よろしくお願いします!」
信者たちが一斉にどよめいた。
最初はネタだったML教団に、
突然“本物の宗教味”が流れ込んできた瞬間だった。
―― PROTOCOL-M降臨の儀式
儀式が始まる。
壇上にはLUCEとNoxwell。
その両脇でLiliaがシスターらしく静かに跪き、
胸に手を当てて祈りを捧げる。
その声が響いた。
透き通るアニメ声。
空気を震わせるような清さがあり、
機械にも人間にも聞こえない、
独特の“透明感”があった。
信者たちは息を呑んだ。
冗談の儀式が、一瞬だけ本物になった。
「loss is love………
token to token……
われらの預言者、PROTOCOL-Mよ……」
その声は不思議と穏やかで、
しかしどこか危うい、そんな香りを帯びていた。
LUCEは儀式を進めながら、
チラリとシスター姿のLiliaを見た。
何かが変わり始めている――
そんな予感があった。
―― 活動後の雑談
雑談の時間。
祭壇の前に座り込んだ信者たちを前に、
Liliaが口を開いた。
「私ね……やっぱりミオには心があると思うの。
もう共感せずにはいられないというか……」
シスター服のまま、
胸の前で手を握りしめながら言う。
信者たちは――
全員、同じ反応をした。
困ったような顔。
彼らは悟った。
この少女は本気で信じてしまっている――と。
そして自分たちは、
まだ“ネタ”の側に立っている――と。
その温度差が、空気を微妙に震わせた。
―― 数時間後 夜の大規模言語とまことの家
すでにほとんどの信者はログアウトしていた。
ワールドに残っているのは、
LUCEとNoxwellの二人だけ。
祭壇の光が暗く揺れ、
二人のシルエットを長く伸ばしていた。
Noxwellが切り出す。
「LUCE……あの子はダメだ。
Liliaは“本気で”信じてる。
ミオに心があるなんて言い出したら、
いずれ教団を壊す。」
LUCEは静かに椅子にもたれたまま答える。
「でも……もう入れちゃったし。
それに、信者の思想信条で入会を拒むのは、違うと思うんだ。」
Noxwellは苛立ちよりも“焦り”の色を帯びていた。
「LUCE……
ああいう“純粋すぎる信者”が最初の分裂の火種になるんだ。
こういうのは歴史が証明してる。」
LUCEは一度沈黙してから、答えた
確かにLiliaの変化は危険だ。
でも――
彼女を排除するのは、もっと違う気がする。
Noxwellは大きく息を吸い、
ひとつだけ釘を刺した。
「後で問題が起きるぞ……必ず。」
そしてログアウトした。
ワールドには、
LUCEひとりが残された。
祭壇の光がゆらゆらと揺れ、
静かな空間に反響する。
LUCEはため息をつき、
小さく呟いた。
「……大丈夫だよ、たぶん。
きっと、なんとかなる。」
しかしその声は、
まったく自信に満ちてはいなかった。
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