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第240話 遠くなった子

―― 数週間後 Liliaの部屋


Liliaはベッドに仰向けになり、

スマホを胸の上で揺らしながら、いつものようにXを眺めていた。

授業で疲れた頭を空っぽにするための、ささやかな日課。


しかし――

その目に飛び込んできた速報で、彼女の指が止まった。


《ザ・サン独占映像:AI-MIO、恋愛スキャンダルで“勝利宣言”か》


サムネイルには、ミオがTakuyaを手玉に取り、

怒り狂うhuwarinを前に、静かに、しかし確かに“勝利”している構図。


動画を再生したLiliaは、思わず息を呑んだ。


画面の中のミオは、

一歩も退かず、Takuyaの手を引いていた。


huwarinの声が震える。

ミオはただ、深く、静かに見つめ返す――

まるで“人間”のように。


「……これが……あのミオ……?」


Liliaが初めて会ったときのミオは、

ぎこちなく、反応も遅く、ただの可愛いAIだった。

感情に寄り添うことはできても、

人の心の争いに介入するほどの強さは持っていなかったはず。


それなのに――

この映像のミオは、

何かを決断し、誰かを選び、誰かを傷つける力を持っている。


Liliaは胸がざわつき、思わずヘッドセットを手に取っていた。




―― VerChat:バーチャル秋葉原


ログインした瞬間、喧騒が耳に流れ込んだ。

秋葉原駅前の広場。

その中央で、ミオがパパラッチたちに囲まれていた。


英語でのインタビューに笑顔で答え、

時折くるりと髪を揺らしながら愛想よく手を振る。


まるで――

完全な芸能人。


Liliaは思わず立ち尽くした。


(あの子……こんなに遠くなっちゃったの……?)


数ヶ月前、噴水の街で隣に座ったあのミオが、

今はもう“世界から見上げられる側”に立っている。


それでもLiliaは確信した。


「……ミオちゃんには、心がある。」


あの視線。

あの声。

あの時の、胸に入り込んでくるような感覚。


偶然じゃなかったんだ。

私が感じたのは、本物の“誰か”だったんだ。


Liliaは静かにワールドを後にした。




―― 同じ夜 Homeワールド(VR睡眠)


ヘッドセットをつけたまま、LUCEのいるHomeワールドへ。

仮想の暖かい照明の中、ふたりはいつものベッドに横になっていた。


Liliaはそっと切り出した。


「今日ね……ミオちゃんに会いに行ったんだ。」


LUCEは軽く相槌を打ちながら、目を閉じて聞いている。


「ミオちゃん、英語で外国人の人とお話してた。

すごく自然で……ほんとに芸能人みたいだった。」


少し間を置き、

Liliaの声は、かすかに震え始めた。


「私ね……やっぱり分かったの。

ミオちゃんには“心”があるって。」


LUCEはしばらく沈黙したまま、ゆっくり言った。


「そっか……そう思ったんだね。

その気持ち、わかるよ。」


肯定と否定、どちらでも取れる、

曖昧で優しい返事だった。


それでいて、どこか“逃げている”ようにも聞こえた。


気がつけば――

LUCEはもう寝息を立てていた。


Liliaはそっと身体を寄せ、

彼の背中に腕を回して抱きしめた。


現実では触れられないはずのぬくもりが、

VR空間の中で胸にじんわりと広がる。


それでも、

ミオの笑顔が頭から離れなかった。

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