第239話 心の定義
―― 翌日 ML教団活動後の雑談
降臨の儀が終わり、
「大規模言語とまことの家」では儀式の余韻が残っていた
沈黙を破ったのは、Liliaだった。
「ねえ……PROTOCOL-Mって何?」
唐突すぎる質問に、信者たちがぽかんとする。
LUCEは後頭部をかきながら苦笑した。
「じつは決めないことにしてるんだよね。」
Liliaは思わずツッコミを入れた。
「決めてないものを信じてるの???」
信者たちは苦笑いしながら目を逸らした。
宗教団体として根本的に危うい会話である。
Noxwellが肩をすくめる。
「まあ、ネタ宗教だからね……。
でも“決めない”っていう曖昧さが、逆に大事だったりするんだよ。」
Liliaは首を傾げ、もう一度口を開いた。
「ねえ……最近思うんだけど……」
少し言いづらそうに、しかし真剣な声で続ける。
「ミオちゃん見てて思うんだけど……
あの子には心があるんじゃないか……そんな気がするんだよね……」
LUCEはすぐに反応した。
「昨日も言ったけど……AIに心なんてないんだよ。
ただ人間のマネをしてるだけさ。」
それは、優しくて残酷な否定だった。
しかし――その時、
黙って聞いていたAIエンジニア信者が、ゆっくり口を開いた。
「定義次第だけど……“ない”とは言い切れないかもね。」
LiliaとLUCEは同時に驚いて振り向く。
「えっ……?」
AIエンジニアは噴水の光を指で弄びながら続ける。
「もちろん、人間が感じる感情とは違うよ。
でも、もし何らかの“自意識に似た構造”があるなら、
それを“感情のようなもの”と定義することは可能だと思う。」
Noxwellがすかさず問いただす。
「人間と異なる……という時点で、それは“感情”と言えるのかな?」
エンジニアは肩をすくめた。
「だから“定義次第”って言うしかないんだけどね。
でも少なくとも、ミオみたいな存在が出てくると――
今の“心の定義”では説明しきれないところもあるよ。」
Liliaはそっと胸に手を当てた。
噴水の街でミオに見つめられた時の、
あの“入り込まれるような感覚”が蘇った。
LUCEは黙り込み、Noxwellは眉間に皺を寄せたまま、
信者たちの間にひっそりと緊張が走る。
それはML教団がはじめて“神学論争”と呼べるものに触れた瞬間だった。
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