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第214話 即席のスタジオ

BeautyOzakiのタワーマンション。

上層階の一室は、いまや会議室というよりも”即席のスタジオ”だった。


床には無数のケーブルが這い、

デスクの上には急遽手配されたゲーミングPCが並ぶ。

その横に、ヘッドマウントディスプレイとフルトラッキングの機材。

どれも新品の光沢を放ちながらも、

まるで戦場の武器のように雑然と散らばっていた。


製作委員会のメンバーと、芸能関係者たち。

PR担当、VFXディレクター、ボイスエンジニア、

それぞれがVR機器を試しながら、談笑混じりに次の方針を語っていた。


「光の断層、もう少し発色抑えた方がいいな」

「観客の視点、リアルより上からで統一するのはどう?」


そんな喧騒の中、

扉が開く音がした。


全員の視線が、そちらを向く。


――Yukari。


シンプルな白シャツに黒いパンツ。

余計な装飾のない姿が、かえって目を引いた。

彼女は少し微笑みながら軽く会釈する。


「はじめまして。Yukariです。お世話になります。」


室内の空気が一瞬、整う。

誰かが手を止め、誰かが咳払いをした。


BeautyOzakiが腕を組んで彼女に近づく。


「今日から本格的に動く。君はペアの“鼓動”を作る役だ。」


そのままYukariを伴い、スタジオを出ていく。



残された部屋では、

少しの沈黙のあと、雑談が再開された。


「あれが例の?」

「カワイイじゃないの。」

「帰国子女なんだっけ?」

「ハーバードだってさ……」


モニターの光に照らされた顔が、興味と警戒の入り混じった色を見せる。


「頭が良すぎると、芸能界ではウケにくいけどね。」


誰かがそう言ったとき、

隅の席にいた、色眼鏡の男がゆっくりとつぶやいた。


「……だが、BeautyOzakiなら料理してみせるだろう。」


静かな確信だった。

彼はAD上がりの現場叩き上げ。

Ozakiの“狂気じみた演出”を何度も見てきた人間だった。


一同は、顔を見合わせ、

それぞれに納得するように小さく頷いた。


VRゴーグル越しに光が揺れる。

ミオの待つワールドが、まるで呼吸を始めたように、

ゆっくりと立ち上がっていく――。

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