第209話 動き出す図面
朝日が高層ビルの窓に反射し、部屋の中を金色に染めている。
机の上には昨夜書いた手書きの企画書。
“Project MIO LIVE ZERO”――ページの隅に汗とインクの跡。
Beauty Ozakiはスマホを耳に当て、
短く切るような声で次々に電話をかける。
「映像チームに連絡。明日の朝までに試作映像を。
照明の奴らには“光の断層”の試験を依頼。
それから……VerChat運営の役員、直接繋いでくれ。」
通話の合間にも、メモにどんどん新しい線が走る。
“VR World”“PR”“Story”。
すべての要素を一枚の紙に配置しながら、
まるで楽譜を描くように構成していく。
机の端のスピーカーから、ミオの歌声が流れる。
VRの残響のような音。
彼はふと手を止め、声を潜める。
「……聞こえるか、ミオ。
お前の声で、現実を動かすぞ。」
その言葉と同時に、彼は再び電話を取る。
「ああ、こっちはBeauty Ozakiだ。
資金は後でいい。今必要なのは“場”だ。
リアルで、観客を入れられる場所――ステージの心臓を押さえろ。」
画面に映るスケジュール表には、赤いマーカーでひとこと。
>「Day 1:構想 → 実行」
彼はペンを置き、静かに笑う。
「紙の上の妄想を、現実のシステムに流し込む。
それが俺のやり方だ。
頭で描いたステージは、書いた瞬間に動き出してなきゃダメだ。」
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