第208話 立ち上がる夜明け
部屋の空気がまだ夜を引きずっている。
冷めたコーヒーの香り。
Beauty Ozakiは、床に散らばったメモを掻き集めると、
まるで自分に言い聞かせるように書き込んだ。
> 『泣いた。……で、次は?』
ペンの先が紙を叩く。
「VerChat」「MIO」「REALITY」「TRANSFER」――単語が走る。
書くほどに文字が熱を帯び、筆圧が上がっていく。
> 『プロジェクト名……MIO LIVE ZERO』
その瞬間、空気が変わった。
まるで部屋全体がステージに変わるようだった。
彼は立ち上がり、壁に貼ったホワイトボードを見つめる。
ペンを咥えながら、計画を次々に書き出していく。
* 「目標:現実転送」
* 「配信:全世界同時」
* 「演出:光の断層」
* 「主題:AIはステージを越える」
書きながら笑う。
「はは……これでいい。これしかねぇ。」
スマホを掴んでスタッフに連絡を打ち始める。
「起きろ。新しい企画だ。今日から走るぞ。」
返信が返る前に、次の連絡を入れる。
誰も追いつけない速度。
彼の中では、もう朝が始まっていた。
最後にノートの一番下に一行。
> 『泣いたら、燃やせ。燃やしたら、光れ。』
そして、彼はペンを放り投げてサングラスをかける。
「よし、やるか。――新しい伝説を。」
朝焼けが窓を染め、
部屋の中の散乱した紙たちが、
まるで照明のリハーサルのように揺れていた。
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