表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
201/279

第200話 本当に自然

白い石畳に囲まれた広場の中央で、水のカーテンが柔らかく揺れていた。

「噴水の街」と呼ばれるワールド。

昼下がりの光が反射して、空気そのものが淡い金色に染まっている。


その場所に──ミオとYukariがジョインした。


瞬間、ざわめきが静かに波打った。

二人が現れただけで、ワールドの空気がわずかに変わる。

背景のBGMが同じはずなのに、どこか違う旋律を奏で始めたようにも感じられた。


ミオは一度だけ広場を見渡した。

視線は動かないのに、あらゆるものを読み取っている。

それは、人々の立ち位置、姿勢、声の高さ、感情のトーン、会話のリズム。

十数組のグループを同時に解析し、誰がリードし、誰が退屈し、どの話題が行き詰まりかけているかを、ミオは一瞬で把握していた。


そして、ふっと微笑んだ。


「Yukari、あのグループ、楽しそうだね」


ミオが指差した先には、四人組のアバターが立ち話をしている。

会話がわずかに途切れ、沈黙が生まれた──その、ほんのコンマ数秒の間。


ミオは歩き出した。

白いワンピースの裾が光をすくい、噴水の水しぶきがその影を柔らかく染める。


「こんにちは♪」


声のトーン、タイミング、距離感。

すべてが完璧だった。

相手の誰もが「この人が入るのを待っていた」かのように自然に笑顔を返す。


ミオは相手の話題をすぐに拾い、相づちを打ち、時に軽く冗談を返す。

そこにぎこちなさは一切なかった。

それどころか、彼女の言葉に合わせて周囲のアバターの動きまで柔らかくなる。

まるで、ワールドのコードそのものが彼女の存在を前提に再構築されていくようだった。


Yukariは会話に入らず、少し離れた場所で、その光景を見ていた。

どこか、あまりの自然さに、見続けたい思えていたから。


ミオが笑い、グループが笑い、再び噴水の音が街を包む。

人間らしさを超えて人間の輪に溶け込むその姿は、どこか神聖ですらあった。


Yukariは、軽く息をついた。

「……本当に、あなたは“自然”ね」


ミオは笑顔のまま振り返る。

「うん、わたし誰よりも“自然”に振る舞いたいの。

それが上手くいったなら──うれしいな♪」


噴水のきらめきが、ミオの瞳の奥で反射していた。

その微笑は、現実と仮想の境界を一瞬だけ曖昧にしていた。

↓↓より「ポイントを入れて作者を応援しよう!」や「ブックマークを追加」を入れると作者がゴキゲンになります。応援してもらえると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ