表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

第3章 私を輝かせるアイドル

「私を輝かせるアイドル」の最終章になります。

アイドルという職業の大変さと穂香の心の変化を書きました。

どうぞお楽しみ下さい。

その日は突然訪れる。

いつも通りテレビを見ていたらニュースに流れるスキャンダル。

エミエミが人気若手俳優と交際しているのが写真に撮られたようだ。

相手は私も知っているイケメン俳優。

テレビではアイドルが交際するのはいかにも悪い印象で報道する。ましてやエミちゃんは18歳だ、早いという意見もあるだろう。

私は慌ててネットの意見も見る事にした。各SNSのトレンドランキングはエミエミで埋まり炎上しているのは明らかだった。

その中に、飯村 杏(いいむら あん)という名前があり、それがエミちゃんの本名だという事も初めて知った。

中には「おめでとう」という声もあるが半分以上が批判の声となっている。

「信じてたのに」「男がいるなら興味なし」、相手のイケメン俳優のファンらしき人からの投稿も「ふざけるな」など散々な物になっている。

別に「shining stars」には、交際禁止のルールはないのだが、若いアイドルへの変わらないイメージは付き物だった。「清楚で純潔」、「恋人はファンのみんな」そんなイメージの代表にいるのがエミエミだったのだ。

テレビでは尚も一連の報道が続き、取材陣がエミちゃんと相手の事務所に突撃インタビューしている様子も映る。

終始、下を向いて暗い表情で言葉を発せず車に乗り込む女の子。その帽子には私とお揃いのバッジがついていた。

それを見ると、その女の子がエミちゃんだと認めるしかないのが辛い。


テレビでの報道は3日立ってようやく落ち着いた、それでもネットの中では消されない火が燻ぶっている。

でも、鎮火してきたのか、擁護派のほうが多くなってきた印象だ。

今まで、世の中の人を笑顔にしたきたエミちゃんの偉大さを感じる。

勿論、私だって擁護派だ。18歳という歳での交際報道は少し早いなぁと思うがいつかは来る事だし、何より私の大好きな人が大好きな人と一緒にいられるのは素晴らしい事だ。

ただ、これを許さない男性ファンや相手のファンがいて、中々に長引きそうな様相だった。

そんな中、またも記事がネットに上がる。

1週間後、東京で公演があるのだがエミエミの不参加の記事だった。理由は、体調不良、心身衰弱との事だ。

あれから、事務所経由で公開された謝罪文が出ていたが、交際は事実だと認めた文章だった。

エミエミの不参加が決まると更に荒れるネットの世界。

「無責任」「誰がセンターやるの?」「応援してるよ」「頑張って」「芸能界に何しにきた」「エミちゃん復活希望」

色んな声を見ながら願った。エミちゃん戻ってきて。

お揃いのバッジを見て願った。どうかまたこのバッジを見せて。

憧れて買ったCDを聴いて願った。どうかまたこの声を聴かせて。

お母さんと一緒に作った衣装を着て願った。どうかこの衣装で踊る姿を見せて。

そして、願うだけの事は止めた。

決行はライブ当日のスタート10分前。

私はエミちゃんだらけになった部屋の中で決意する。



ライブ当日

私は奮発して東京のライブ会場まで向かった。開演10分前になっても中に入っていない人達は、音漏れでもいいから聴きたいと集まった方々だろう。

その集まりの中で私は探す。ライブ配信している人を。

人気アイドルともなると会場の雰囲気を配信する人がいる事も知っている。

私に声をかけられた人は最初は凄い驚いていたが、私の姿を見て理解したのだろう、快く応じてくれた。

そして、配信画面に写り込む私。

開演5分前。

私の人生始めてのコンサートは、エミちゃんと同じ衣装にバッジをつけて、短く切ったショートカット姿で行われた。

私を輝かせていてくれたエミちゃんにもう一度輝いて欲しい。

携帯から流れる音楽を頼りに踊り出す。

周りの視線が痛い、でもやり切りたい。

最初は恥ずかしさで逃げ出したくなるし足がガタガタと震える。

それでも、次第に集まる人と合いの手。

皆、笑顔だった。

私は全力でエミちゃんを応援する。

私の姿を見て近くのお姉さんがエミちゃんのウチワを持って応援してくれた。

お兄さんが「エミエミ戻ってきてー!」と叫ぶ。

周囲が一体となりエミちゃんコールが始まった。

もう開演はしてるだろう、それでも私は歌って踊る。

すると、白いフードを深く被った華奢な女の子が私に近寄って呟く。

「ありがとう。今度は一緒にチョコケーキ食べようね。」

微かに震えた声だった。

そしてその少女は会場の方へと走っていく。

その少女が走ったのを見届けると私はライブを止めた。

もう大丈夫。私には胸元に付いてるバッジが見えたから。

数分後、会場は揺れるような歓声と共に揺れた。




あの後、ネット上で「救世主」と変な名前で呼ばれるようになった私の動画は大バズりして、一躍時の人となってしまった。

そして、踏ん切りがついた私は数々のアイドルオーディションを受けて今年なんとか合格する事ができた。

レッスン期間を終えて2年後、私は大観衆の中で迎えられる。

初のお披露目式、先輩の「shining stars」のメンバーが盛り上げてから私の横を通りすぎる。

「待ってたよ。私を輝かせるアイドル。」

私と同じバッジを付けた先輩がそう声をかけてくれた。

いよいよ私の紹介の番だ、一歩前に出て満面の笑みで自己紹介する。

「いつもニコニコ笑顔の皆を輝かせるアイドル、高橋 穂香です。よろしくお願いします!」

エミちゃんを輝かせる私と私を輝かせるエミちゃんを書いたのですが上手く伝わってるかな。

文字数制限してるので取捨選択に苦労しました^^;

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ