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第2章 私を輝かせるアイドル

やっと念願のエミエミと生で会えた穂香。

その喜びは最高潮に達する。

ライブの熱狂はとにかく凄かった。

初めての参戦だったが私も例外なく声をあげて「エミエミ」の名前を叫んだ。

ステージで踊る彼女はにこやかに笑い、会場の皆に癒しと輝きを配っている。

代表曲の「私を輝かせるアイドル」も聴けて、最高のライブとなった。

大きな会場ではないので今回は3曲だけの披露となったが私にとっては大満足だ。

そして、私はライブの熱狂の余韻を感じながら握手会場を目指す。

私は、握手会の流れがわからなかったので、少し恥ずかしかったが列に並んでいる人に確認してみた。

すると朝もらった整理券でCDを買うと握手券を貰えるらしかったので、私は急いでCDを買いに行く。

再び握手会場の列に並ぶ頃には、列は長くなっていて、案の定エミエミの列が一番長かった。

早く握手したい所だが、ファンとしてこれはこれで嬉しいものだ。

私は話す事を決めておかないと、と思いながら胸元のバッジを見る。

エミちゃんが前のライブで付けていたバッジをインターネットで頑張って探し出して入手してきたのだ。

今日はバッジしか真似してないし髪は伸びてしまったけど、エミちゃんへの憧れは捨ててない。


「ぇと、まずはバッジ同じの買いましたって見せてから、大好きです、これからも頑張ってくださいって言って……。」

んー、5秒ってこれくらいしか伝えれないじゃないかと頭を悩ませていると、

「エミエミとやっと握手できるよー。」

「今日も超可愛かったよねぇ、私ちゃんと握手できるかしら。」

などと声が聴こえる。

皆、私と同じ気持ちなのが嬉しい。

結局、30分は待っただろうか、この次が自分の番だ。

「はい、次の方ー」

そう呼ばれてブースの中に入るとそこには笑顔で迎えてくれるエミエミがいた。

立って手を刺し伸ばしてくれるエミちゃんに無意識に手を差し出す私。

可愛い、顔ちっちゃ、スタイルめっちゃ良い、声可愛い、オーラすごっ。

頭の中で感想が走馬灯のように押し寄せてしまって私は上手く声を出す事ができない。

折角、整理したのにーと思いながらも精一杯エミちゃんを見ながら「好き。」とだけ言えた。

やっと言えたと思った頃には係員さんが私に手を伸ばしながら「次の方ー」と声をかける。

私は目でエミエミを追っかけながら手で自分の胸元のバッジを指してお揃いだよアピールをして追い出された。

舞い上がりすぎてしまった。

エミちゃんが何か言っていたような気もするが思い出せない。頭の中が声可愛いに侵されて言語能力が機能しなかったようだ。

私は夢見心地のまま誘導される方へ歩いて行き、そのまま会場を後にした。

お母さんとお父さんには今日の事を一杯話した。相変わらずアイドルに興味はなさそうだが、時には笑いながら楽しそうに聞いてくれる。

「ねぇ、お母さん。やっぱりエミちゃんの衣装が欲しい!」

ライブに感化されて、最近はずっと抑えていた感情が溢れ出す。

やっぱりエミちゃんは私のアイドルだ、クラスで何と言われようが関係ない。

今までにエミちゃんの衣装は何着か作った事があった。

勿論クオリティは本物と段違いに低いが、まぁ、50m離れてれば同じに見えるくらいの物が作れる。

私はライブ帰りだというのに寝落ちするまで衣装制作に夢中になった。なんだかこの日はお母さんも遅くまで協力してくれて嬉しかった。


翌日、私の学校へのお供にはバッジに、筆記用具などエミちゃんグッズ盛り沢山で登校した。

また何か言われるかもと思ったが、意外とそんな事もなく、仲の良い友達は、「オタクが戻ってきたなぁ。」と笑いながら言ってきた。

何だこれなら髪型も真似しても。と思ったが、そこまでするとまた陰口言われるかもしれないし、何より憧れの存在に近づきたいという気持ちと恐れ多いという気持ちまで昨日のライブで追加されてしまっていた。

それでも、私は明るくなれたと思う、昨日のライブ後から絶好調だ。

そんな気持ちで学校が終わると私は帰り道に一人近所のスイーツ屋さんに行こうと思った。

何か良い事があるとここで甘い物を食べるのがポリシーなのである。

私は顔馴染みの店員さんに促されながら席へ案内される。

すると、

私の口はポカーンと開いたまま目が前方から離せなくなっいた。

そう向かいの席に小さい壁は挟んでいるが、帽子と眼鏡で変装しているエミエミがいるではないか。

昨日、生で会って手を繋いだばかりだ、それに溢れ出るオーラ。間違いない。

店員さんが私にオーダーを聞きに来たが、メニュー表を見ることもなくショートケーキを頼んだ。

勝手に目がエミちゃんを見続けてしまうのだ。

そうなると流石に向こうも気づくのだろう、一瞬バレないようにこちらと目を反らしたが、諦めたように私の方を見返して軽く微笑んだ。

ズッキューン、こんなわかりやすい言葉でしか表現できないくらいに心が撃ち抜かれた。

すると、エミちゃんはおもむろに立ち上がり、私のテーブルの椅子に座った。

「ねぇ、あなた昨日握手会来てくれてたよね?」

認知されてる?!何故。と思っていたのが顔に出ていたのだろう、無言でいる私の鞄についてるバッジを指さした。

でかしたぞ、バッジ君、今日から君は我が家の家宝だ!

そんな下らない事は頭の中を巡るのに目の前のアイドル様とはろくに会話ができない。

「ふふっ、緊張してる?昨日はお喋りできなかったしね。」

私は何とか心を落ち着かせて聞く事ができた。

「どうしてここへ?」

するとエミちゃんは私が声を出せたのを嬉しそうに言う。

「なんかここのデザートが美味しいって口コミ見て食べにきたの。」

確かにここのデザートは美味しい、私が自分へのご褒美に採用してるぐらいだが、アイドルがわざわざくるほどの人気店だとは知らなかった。

「そうなんです、ここのどれも美味しいんです。」

すると、エミちゃんはメニュー表を広げてチョコレートケーキを指さしながら、

「今日、これ食べたんだよ、めっちゃ美味しかった。」

私これからショートケーキ派からチョコレートケーキ派になりますと心の中で誓う。

「良かったです。是非、また来てくださいね。」

店の店員でもないのにまたのご来店をお願いしております私。

「ライブには何回か来てくれてるの?」

そんな私の心の声など気にせず話を続けるエミちゃん。

「いえ、昨日が初めてで。3年前から応援してて、ずっとずっと大好きでした。」

少し声が大きかったかもしれない、周りからの視線が刺さる。

言ってから恥ずかしくて中々、顔を上げられないでいたが先ほどの店員さんがショートケーキを運んできたタイミングでようやく顔を上げれた。

チョコレートケーキにしなかった自分が忌まわしい。

そして、店員さんが来たせいだろう、エミちゃんは自分の席に戻ってお会計しなきゃと言った仕草で席から伝票を持ち上げる。

去り際にエミちゃんは私に声をかけてくれた。

「あなたの笑顔、可愛いよ。またライブ見に来てね。」

終始私の理想通りのアイドルのエミエミに圧倒されてしまった。

しかし、最期の笑顔が可愛いって何なんだろう、私の笑顔が可愛いなんてわけないのに。

そう思いながらもショートケーキを食べる。ご褒美が増えた気がして最高の気分だ。

第3章までの作品の予定の為、文字数制限しております。

今回大幅に予定文字数オーバーしたので修正するかも。

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