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4話 なぜ?

老人の名はアルベスト

若々しく感じるが今年齢110を迎えた。

この世界の平均寿命が約70~80

つまり地球基準で考えてよいから凄まじいといえる。

だが、彼はこの国の元帥である。

この国は小さいので大元帥の位は無いから軍という集団で見るならばこの国で最高位である。

優秀な若者がいないわけではない。

彼が凄すぎたのだ。


それ故に自国下位の武人からは尊敬を込めて、

また他国の猛者からは畏敬と恐れを込めて、

知る者のみの間で囁かれることがある。

『竜杯』と。


この世界で生物界の頂点に在るのは「ドラゴン」。

「龍」「竜」とも言う。

物理的な力はもちろんのこと

そもそも出会った瞬間のその存在感が人を跪かせるに十分な威厳を持つ。

人が失いつつある本能でさえそれに従って頭を垂れさせるのだ。


「竜」の名を囁かれる「人」に対して110歳などで驚いてはならないだろう。



それほどの彼が行ったことは「召喚」

部下はみな驚いていた。

何よりこの小国が大国から国と承認された理由がアルベスト本人の力と言うほど彼は凄いのだが、

その彼が「召喚」をするのだ。

もちろん、彼が神にも等しき者を召喚するのではないかと恐れられたこともあるのだが、

それ以上に驚かれた理由は「何故元帥程の人が自信を強化するための召喚などを行うのか」という疑問であった。

だから「元帥の死が近い」とか「元帥以上の猛者が現れた」とか様々な噂が飛び交った。


だが結果をみるとその噂はすぐに静まった。

全ての人はこう思った

「彼は本気ではなかった」と。


それも仕方のないことで召喚されたのは青年。

それも何の気配も持たない若者であったからだ。


この世界では魔力と言って良いか分からないが、

まぁ、魔法を使うための素となるものだから魔力と言うしかないが

それが彼にはなかった。

そしてこの世界には階級があるのだが、

単純に言えば「それが魔力の量に比例する」と片付けられる。

それが無い。


アルベストが本気なら「竜」を呼び寄せても不思議ではなかったのだ。

故にその召喚にはもっと簡単な理由が付けられた。


この国は王政。

子は4人。

上に三姉妹

一番下に長男がいる。


三姉妹のうち長女、次女は嫁いでいる。

そして三女は12歳

長男は9歳。

つまり、彼ら二人の安心できる遊び相手またお目付け役として青年は召喚されたのだと。

そう片付けられた。


では本当にアルベストはそう思っていたのだろうか。


そんなことはなかった。

彼自身驚いていたのだ。


彼は本気であった。

召喚後は部下の手前足取り一つとってもしっかりしていた。

が、実際は倒れそうなほどに全力で召喚を行った。


それはそうと、

なぜこれほどまでして彼はこの召喚にこだわったのか。


というのも、ここは小国。

大国の権威の前にはいつでも属国となり得る。

彼にとっては王の子4人は孫も同然。

また王も自分の子のように思っている。


その中で三女アリスは未婚。

年齢的には未婚であるのは当たり前だが、

もしアルベストが死ぬようなことがあれば必ず彼女はどこかの国に人質として嫁ぐまたは婚約しなければならないだろう。


人質とは聞こえが悪いが

そもそも小国が国であるためには大国に王族の誰かが関係者として存在しているのが常識である。

この国はアルベストの力故の国。

長男は後継であるから必然としてアリスが嫁がねばならない。


アルベストはこの「常識」を常々おかしいと思っていた。

故に今の彼は国を認めさせる方法を「人質」以外の何かでも可能になるように努力をしている。


だが、

これは政治。

力ではない。

いくらアルベストが強いとはいえ人の意識を変えることとは無関係であった。

いつ死ぬかもわからぬ年齢に、いつ達成できるかもわからぬ改革。


その保険が「召喚」であった。

もし何も成さず自分が死ぬようなことがあれば

自分と同じ程の力を持つ者の存在がこの国を国として存続させる。


アルベストは何も力で大国を屈服しているわけではない。

それは各国からの敬意である。

彼の功績を讃えこの国を何の対価も無しに国と認めているのだ。

これは5大国の総意である。


だから彼は呼び出した者に自分と同等の功績を納めさせることで今の状況を気休めではあるが保っておきたかった。


だが結果はどうだろう。

魔力を一切持たず

見た目もただの人間でまだ幼い。

(まぁ18歳なのだがアルベストにしてみれば)


故に情けなかった。

力はある。

が、その力が必要な時に役立たぬ。


そんな自分が情けなかった。


しかし、そうはいってもそれは自分の都合。

呼び出された者には関係のないこと。


相手にも様々な都合があったであろう。

それを呼び出しておいてこちらの都合に見合わないので「失敗」と片付ける。


それは人として、また意識、常識の改革を為そうとする者の行為ではない。


故に彼は召喚の一切を話した上で、

力の如何によらず、こちらの生活に不自由のないようにもてなすつもりだ、と語った。


それがせめてもの、

こちらの都合で動いた事への謝罪であった。

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