2話 うっとおしい奴が出てくるぞ…
どうも。こんにちは。
赤峰 弥生です。
日常とはなんでしょう?
いつもと変わらないルーティンな日々のことでしょうか。
そんな日々の中に時々非日常があれば世は事もなし。
そうです。
非日常が非日常足るのはそれが「時々」の出来事であるからです。
今僕がいる場所はどこでしょうか?
少なくともgoogle mapで検索しても出てこないのではないでしょうか。
床、壁、天井。
そのどれもが白・白・白。
あまりに白すぎてどこまでが壁でどこまでが天井なのか錯覚を覚えます。
確かに僕は「見て」いるのですが「分かりません」
こんなことは初めてです。
目の前に一人のお爺さんが座っておられます。
空気椅子でしょうか?
姿勢は確かに座っておられます。
ですが白い椅子なのか全く椅子が見えません。
不思議です。
自分以上に不思議な存在を見るのは初めてです。
どうやらここは僕の知る範囲の世界ではないらしい。
この自問は終わりそうもないので話しかけることにした。
「ここはどこで、あなたは誰ですか?
どうして僕はここにいるのですか?
僕は死んだのですか?」
お爺さんは答えた
「全てに答えることは出来るがそれに意味はない」
思った以上にハキハキした口調で、また声は若かった。
目を閉じていればとてもお爺さんである姿は想像できない。
「君はヒトにしては不思議な力をもっているだろう。
そのことに関して、また私の都合で君はここにいる。」
僕は誘拐でもされたのだろうか?
この能力を知るのは僕のお爺さんくらいのもので
その祖父は必ず僕の味方だろうし、
しかもそれではこの部屋の異様さは全く説明できない。
「不思議ついでにもう一つ不思議を君にプレゼントしようと思ってね。
私の知り合い、ではないが爺さんが強い人をもとめていてね、
君を紹介しようと思っている。
実際君は大学生にしてはやや強いかもしれないが
あっちじゃ弱い部類にちがいない。」
この人はダメだ。
何も人の話を聞いていないし聞く気がない。
自分から「見て」やろうか?
とも思ったが疲れるし苦しいのでやめよう。
「主人公がチートだったら世の中万々歳で何事も終わってしまうじゃないか。
若者は苦悩してこそ青春の思い出に色が出るというものだ。
あ?今力を使おうとしたね?
「なぜ分かっ…」
ダメダメダメ。今はまだ早い。
もっと学ばなければ。知識なき者が力を振りかざせば自身をも飲み込んでしまう。
これはゲームの世界じゃ常套句。
そして私が言わなければならいないセリフだ。」
何を言っても無駄なようだ。
僕自身テレビゲームは嫌いではないのでこんな場面に出くわすことはしばしばあった。
「分かりました。分かりました。
では僕は何をすれば?
どうすればクリアなのですか?
あなたか神とでも名乗るのでしょう?」
白いお爺さんはニコニコしながら続ける。
そのニコニコには微塵もいやらしい部分はない。
「すばらしい!なんと者分かりのいい主人公だろう。
てっきり無理やり送ることになると思っていた。
すばらしいがその質問はダメだ。
何をする?クリア?
そんなものはあってはならない。
いや。人生の目標は持てばよい。
人生が終わるのは死ぬときだけ。
そこに筋道などない。
問題はどう生きたか。
君が死んでも世界は続く。
その後のことは私だけ知ってていれば良い。
だから君は生きなさい。」
急に彼が聖人のように見えてきたのは気のせいだろうか?
いや。
自称神であるが、およそそれは正しいと思えるのでその疑問は失礼だろうか。
「そうですか。では僕は元の世界には?」
「もちろん戻さない。
問題もない。あの世界はどの歯車も狂ってはいない。
問題があるとすれば君自信。
納得できるできないに関わらず送られるということ。
時間がない。もういいだろうか?」
<戻さない>ときた。
戻せるということではある。
がそこは神の御業だろうか。
元の世界は正しいという。
未練はないと言えばウソになる。
が、僕を悲しむ存在が居ないと言うだけで心は軽くなってしまった。
抗うことすら無意味な状況とはこのことか。
「分かりました」
そういって弥生はその場から消え去った。
「しかし彼の力は面白い。
使い方次第とはあのことか。
歳の割に精神も大人びていたのはやはりそのせいか?
だが、もつだろうか?
やはりヒトの範疇を越えはしていないし…
個人的には完結してほしいが…」
「あ、私の芝居も語ってくださいよ!」
ブツブツ独り言をしゃべった後に上に向かってそう叫ぶとその男もまた消え去った。