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3、生存ルートを目指します

まずい、非常にまずいぞ。


異世界転生した際に、転生先で死んだら、ゲームのようにセーブデータの場所から何度もやり直せるのか、それとも現世に戻ってくるのか。


一番最悪なのは、現世でも死んでしまうのか……どれも確証は無い。

なので、転生先でも死なない方が一番安心だろう。


ヒロインが死亡する美しいメリバエンディングの数々が頭の中で流れるが、



(確か一つだけあったわ。ヒロインが死なないで済むルートが)



ルナは頭の中で攻略サイトを思い出す。


唯一生き残る方法はただ一つ。


ヴィクターとリロイの好感度をMAXにした上で、自分のステータスをMAXにする、『大戦争を勝ちに導く光の聖女として君臨』、激ムズの『トゥルーエンド』のみ。


恋人として愛されるのではなく、強い二人から、一生従う敬愛の存在の光の聖女として愛される、というものだ。


この場合は、もはや好感度がカンストしているため、他の男と仲良くしようと、



「光の聖女様に、俺は従うだけだ。この命はお前のために捧げる」



「君が誰を好きだろうが関係ないよ、僕が君を愛していることに意味があるんだから」



と愛され無双モードになるのだという。


ヤンデレのメインヒーロー二人から激甘愛され溺愛モードになるのを見てみたい! と思っていたが、限られたイベントやターン数の中でステータスをMAXにするというのがかなり無理ゲーで、課金ガチャを回してステータス上げるチートアイテムを駆使してやっとだというので、ルナは現世でトゥルーエンドを迎えられたことはない。



(でも、目指すしかない……生き残るために。そして、二人から愛されるルートも見てみたい……!)




命を賭けた死活問題と、あとは少しの推し心で、ルナは決意した。




* * *




今自分が立っている場所は、ローウェン城の入り口の前。


この世界では聖女というのは非常に稀有な存在で、人数がとても少ない。


大抵は大陸内の大都市の聖堂に配属されているものだが、ヒロインは聖女の力を隠して田舎で育てられ、魔族との戦闘で怪我した人を治癒魔法で治した際、それを見た騎士団にスカウトされた、というストーリーだ。

そのため、ゲームの冒頭は、騎士団が配属されているローウェン城に招聘され、騎士団にお目通りするところから始まる。



早まる鼓動を抑えて、ルナは深呼吸をする。


ステンドグラスに映った自分は、ハニーブラウンのウェーブ髪で、翡翠色の大きな瞳、色白にピンクの唇、折れそうなほど華奢な体の、ヒロインの姿だ。


こんな可愛い子、惚れない男がいるわけないじゃないというほどの美少女だ。


可愛いだけでなく、聖女という肩書きにぴったりの、品があり神秘的な雰囲気もある。




憲兵の合図で、ローウェン城の重厚な扉が開く。


銀の甲冑を着て手に槍を持ち、直立不動の状態で立っている騎士団の縦列の真ん中を、白い修道服を着たルナはゆっくりと歩いていく。



紅い絨毯の敷かれたその奥には、玉座が置かれており、金髪の男性が足を組んで座っている。


向かって右側には、漆黒の甲冑を着て腕を組んでいるヴィクター、左側には魔導士のローブを着てうすら笑いを浮かべているリロイの姿が。



「やあ、よく来たね聖女様! そんな緊張せずこちらへ」



玉座に座っている金髪の男性が、気楽な調子で手を上げたので、ルナは彼の前まで移動して膝を床につき頭を下げた。



「ルナ・レミリアと申します。ラインハルト騎士団長様、お初お目にかかります」



彼はこの騎士団を取り仕切っている、騎士団長のラインハルト。

ヴィクターとリロイという癖のつよい二人を両腕として従えている、彼らの上官である。



「尊い聖女様が、我々のようなむさ苦しい兵に頭を下げることなどないですよ。こちらこそ、騎士団付きの聖女になっていただけるなんて感謝しております」



怪我をしたら、聖堂に行き大金を払い、傷を癒してもらうのが本来の手続きだが、魔獣の勢いが増している昨今、出陣が増えることにより怪我人も増え続けるので、ぜひ従軍してくれないかと頼まれた。という設定だ。



「これからよろしくね、ルナくん」


「はい、よろしくお願いいたします」



三十代半ばと思しきラインハルトは、年相応の経験豊富さから出る穏やかさで、優しい笑みをルナに向ける。



「戦闘のことに関しては、黒騎士ヴィクターから、魔術のことに関しては大魔導士リロイから話を聞くといい。どちらも、誇るべき我が軍の筆頭だ」



ラインハルトはそういうと、自分の横に並び立つ二人のメインヒーローを紹介した。


ゲームでは、ここからチュートリアルの説明が始まるものだ。


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