表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/21

2、転生したいなんて言ってない!

私の名前は木崎瑠奈。都内で働くアラサーOL。


毎日終電近くまで働くプロ社畜で、帰宅後は風呂キャンセルしベッドに倒れ込み、次の朝シャワーして濡れた髪のままコンビニの菓子パン齧りながら出社する毎日。


そんな私の唯一の楽しみは、昼休みと通勤時間にやる、ソシャゲの乙女ゲー。


新シリーズがリリースされたら必ずプレイし、絵師さんや声優さん目的でキャラを楽しみ、なけなしの給料を使って季節イベントに課金しては、ガチャで出たレアスチルに一喜一憂している。


学生時代からの年季の入った乙女ゲーオタクな私は、そんじょそこらの王道乙女ゲーでは満足できなくなっていたけれど、昨年リリースされた「ブラック・ナイト・パレード」のストーリーはすごかった。



なんと、攻略するメインヒーローの二人がどちらも「ヤンデレ」。


ヤンデレ特化型の乙女ゲーは珍しかったし、絵の綺麗さで軽い気持ちでプレイし始めたが……これがもう、一言で言うと、完全に沼ったのだ。



黒髪に紅い目、たくましい体で大剣を振るう、黒騎士「ヴィクター」。


どんな敵も一刀両断で薙ぎ倒す唯一無二の強さ。


しかし、その生まれは山奥の修道院に捨てられた孤児で、十四歳の時に盗賊に襲われ修道院も燃やされ、育ての親も仲間も全員失ったという、天涯孤独の辛い過去の持ち主だ。


クールで男臭くてかっこいいのに、トラウマ持ちで心の闇が深いため、恋愛に関しては異様に自己評価が低いのがミソだ。


うっかり他のキャラとの好感度を上げてしまうと、



「お前も俺を捨てるのか……? いかないでくれ……お前に捨てられたら、俺は……!」



と、孤児だったという特大地雷を踏み抜いてしまい、泣きながら必死に縋りついてくるヤンデレっぷりは、電車の中でプレイしながらゾクゾクしたものだ。しかもCVがツダ○ンとか、神である。


SNSでも、『屈強な男がグズグズに泣きながら自分に縋りついてくるのがたまらない』、『新しい性癖の扉が開いた』、『ヒロイン×ヴィクターですよね、わかります』といった絶賛のコメントを見ては、同感だといいねを押していた。



そしてもう一人の攻略キャラ、中性的な美しさを持つ銀髪の大魔導師、『リロイ』。


彼は由緒正しき貴族の生まれで、4人兄弟の末っ子。

魔法学園を飛び級した天才で、斬っても倒せない強い魔獣を、体の中から殺すための毒薬や毒魔法の開発に、天才的な才能を発揮した優秀な逸材。


しかし、その毒薬が人間同士の殺人事件に使われてしまい、製作者の責任を問われ投獄され、貴族の地位を剥奪されたため、その犯人を獄中で半殺しにしたというサイコパス系ヤンデレである。


美しい銀髪にタレ目、泣きぼくろという顔面国宝SSRだというのに、



「ははっ、お前の周りをうろちょろしてたアイツ? そういや、最近見ないね……? 何も心配しなくていいよ。嫌いなんだ、自分の立場がわかってないやつ」



とガンギマリ暗黒微笑(CV石○彰)で言う姿に、


『私もリロイ様に殺されたい(物理)』、『その顔と声の貴方様以外によそ見するわけがありませんありがとうございます』と、信者が絶えない。



そしてゲームの最大の楽しみは、どちらのヒーローと結ばれても「メリバエンド」なのである。


メリーバッドエンド……それは、ロミオとジュリエットに代表されるように、物語としては悲劇だが、登場人物の二人の心は満たされ救われる結末、というもの。



黒騎士ヴィクターと結ばれると、魔族との大戦争の果てヒロインは死んでしまい、守れなかったことを悔いたヴィクターは、軍神として王国を守り英雄として長年祀られが、最期は一人孤独に戦場で死んでしまう。


大魔導士リロイと結ばれると、大戦争に負け傷を負ったヒロインと共に、リロイは燃え盛る炎の宮廷の中に消え、共に命を断つ心中エンドになる。



現世でプレイした時は、メリーバッドエンドでエモいとお気に入りで、一人プレイしては枕を涙で濡らしたものだが。


(そのゲームのヒロインに転生したとなると話は別! わたし、100パー死ぬじゃん!)




ヤンデレ乙女ゲーに転生するなんて思っていなかったルナは、心の中で叫んだ。


大好きなヤンデレものの連載開始です!


ぜひ⭐︎を押して評価をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ