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西の王国・2

 旅の道中、勇者の善意に付き合わされて、何度も死にかけた。

 勉強をしないわけでは無いが、異世界人の好奇心にも、何度か殺されかけた。その度に喧嘩をしたし、酷い言い方をしてしまった事もある。

 だからこそ、なのか。いつの日からか「居心地が良いな」と思えた。



 ようやく入る事が出来たエヴィルランド王国は、厳かな街並みと上質な衣装で身を包んだ人々が行きかっていて、十五年前から変わっていない風景に少しだけ安心感を覚える。

「先ほどの魔法は、雷と木の魔法を利用したものです」

 あの時以来か。と懐かしんでいた私だが、隣から向けられる熱い視線に耐えられず、向かい側に座っているアンジェラの方からも圧力を感じたので素直に話を切り出すことにした。

「そうだったんですか!? 雷系は水属性の天敵と聞きますが、使えない訳ではないんですね」

 馬車に乗られてから、ずっとソワソワしていたエミリオ殿下が喜びを露にし、瞳を輝かせて迫ってきたため、思わず仰け反る。

「はい。ですが、加減を間違えると腕が飛びますからマネはなさらない方がよろしいかと……」

 義手を目の前でかざして伝えるが「雷属性特有の爆破現象ですね!」と、目を爛々と輝かせているエミリオ殿下に嫌な予感しかしない。

「絶対にマネはなさらないでください。火属性ほどの威力は勿論、無属性ほどの応用力もない上に最悪の場合、負傷した部位は一生そのままですから」

「叔父様、なんで使う事になりましたの?」

 重ねて強く忠告する私に対し、半泣きのアンジェラから出された当然の疑問に「この国で火の使い手を引き入れるまで、雷属性すらいなかったから」と、素直に答えれば驚かれた。

 最初は爪が剥がれる程度で、回復もしていたのだがなぁ。五回も使ったのが良くなかった。

 ものすごく痛かったし、義手になった事で加減をする必要が無くなったとはいえ、使わないに越したことは無い。

「そういえば、ランプランド王国には十歳で団長に就任した無属性の天才魔法騎士がいると聞きましたが、どんな方なんでしょうか?」

「あ、はい、そうですね。元気な少年です」

 言った瞬間、アンジェラとジュリアが噴出した。

「無属性は珍しさから迫害された歴史がありますが、その子は一体、どういった経緯で団長に?」

「えっと、当人が言うには自分の意思とは反対に、あれよあれよと……」

 再びアンジェラとジュリアが噴出する。今度はエミリオ殿下も一緒に噴出していた。

 はぐらかされていると思われているかもしれないが、十二騎士団同士の対立に加え、人手不足と当人のやる気が嚙み合った結果、今に至るのだから、これ以上の説明を求められても答えようがない。

「噂では、グラニエール団長の助力で地位を得たのだと聞きましたが、実際は?」

 そんな噂が流れているのか。誰が流したのかは知らないが、我々をなんだと思っているんだ。


「私ができたのは、彼の実家を援助する程度で他には何もしていませんよ。彼の実力です」


 騎士団へ入団する際、実力を図るための模擬戦で闘技場を破壊する威力の火炎魔法を放ち、危うく対戦相手を亡き者にしかけておきながら「大した実力ではありません!」と言い放ち。

 新人が受ける野外訓練の際、第三王女・ヒュパティア様が他国の暗殺者に襲われている所へ居合わせ、練習中だったという氷魔法で撃退しただけでなく、高度な技術力が要求される治癒魔法で近衛兵の傷を治しておきながら「大したことではありません」と言い。

 その結果、爵位を賜った彼が「ライアンさんのおかげです!」と、キラキラとした眼差しを向けてきた時は戸惑ったし「あの時、貴方が助けてくださらなかったら、今の僕はありえません!」と、言い出した際には陛下や大臣ともども背筋が凍った。

 以上の事から、エドガーが今の地位を得たのは単に彼自身が実力を持っていたからで、そもそも彼の叔母に当たり人物が現在の宮廷魔術師・エルリア殿なのだから、私は関係が無いように思う。


「金貨五千枚に相当する借金を肩代わりして、魔法の指導までしておいて、何を言ってますの?」


 納得していないのは理解できるが、他人様の家庭事情を勝手に暴露するのは如何なものかと思うぞ、アンジェラよ。

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