44.デートのようなもの
深海とのやり取りから三日後――
「へへ……パーティファボ200万……」
ミカゲは増加したパーティファボ情報を見ながら、思わずにやける。
レベル3によるA級撃破は少なくはない影響を与えていた。
それ以前と比較し、パーティファボはなんと倍増していた。
「待たせたな」
「……!」
ミカゲは声の方を向く。
「っっっ~~!」
そして絶句する。
◇
昨日――
「ミカゲよ、明日、休日だよな?」
「あ、はい」
ミカゲは揺から電話があり、話していた。
「何か予定はあるか?」
「え、まぁ、明日は完全オフにしようと思ってたので何もないです」
「なるほど……完全オフか……じゃあ、悪いな……」
(……? 何かのお誘いかな……揺さんには世話になってるしな……)
「なにか入用でしょうか? 私であれば協力しますが」
「本当か!? であれば、すまんが、ちょっと付き合ってくれないか?」
電話越しの声が明るくなる。
「……? 何にでしょう?」
「スライム展」
「スラ……イム展?」
「あぁ……今、ちょうど池袋でやってるんだ」
「そうなんですね……」
(揺さん、そういうの行くんだな……しかし、イメージ的には一人でも行けちゃうタイプに思えるが……)
「普段なら一人で行くのだが、実はな……これがあって……」
ミカゲの前に画像がポップする。
それは"カップル限定! モチスライムのフィギュアプレゼント!"と書かれたチラシであった。
(なるほど……)
「いいですよ」
「おー、恩に着る!」
「いえいえ」
「あ、一応、そこそこの有名人になってきているから軽く変装して来いよ」
「え゛!? そ、そうですね。わかりました」
◇
そうして今日を迎え、今に至る。
「待たせたな」
「……!」
ミカゲは声の方を向く。
「っっっ~~!」
ミカゲは思わず、絶句する。
「……」
そこには、白の七分袖くらいのヒラヒラしたカットソーに黒のシックなロングスカート。
髪にウェーブをかけた女性がいた。
「あの…………ひょっとして揺さんですか?」
「他に誰がいるんだよ」
「……そうですよね、白衣脱ぐことあるんだなって……」
「君……やっぱりちょっと私のこと馬鹿にしてないか?」
揺は眉を逆八の字にしている。
「いえいえ、そんなことは……でもいつもとちょっと雰囲気違うなって……」
「変装しろって言っただろ?」
「えーと……そうですね」
(それは変装というか……)
いつもと違う揺の雰囲気にミカゲは少しどぎまぎしてしまう。
「なんだ? そんなに変か……?」
「……変というか、その……いつもより綺麗で……いや、いつものはいつものでいいのですが……」
「え゛!? そ、そうか……? ほ、褒め言葉として受け取っておこう……」
綺麗は褒め言葉以外の何ものでもないのだが……
ちなみにミカゲは帽子と伊達メガネをしていた。
その後、二人は目的のスライム展へと向かった。
道中はなぜか少し会話があまりなかったが、展示会場に行くと、揺はわりと元に戻り、様々なスライムを興味深げに眺めていた。
そして……
「あ、あれですね」
「お、本当だ」
目線の先には"カップル限定! モチスライムのフィギュアプレゼント"の旗がある。
どうやらそこが配布会場のようだ。
「すみません! モチスライムのフィギュアください!」
揺はそう言う。
「はい、承知しました。一応、カップルの証明をお願いしておりまして……」
「か、カップルの証明!?」
「はい、まぁ、簡単なもので、お二人で手を繋いでいただくだけなんですけど……」
「て、手を……!?」
揺はちょっと焦っている。
「ほい」
「っ……!!」
「これでいいですか?」
「はい、ありがとうございました。それでは、こちらモチスライムのフィギュアになります」
「……」
「お客様……?」
「あ、すみません、ありがとうございます……」
揺は少しぽけーっとしていたが、無事、目的としていたモチスライムのフィギュアを受け取る。
◇
帰途――
「今日はありがとうな」
「いえいえ、こちらこそ。スライムについて色々と学びもありましたし」
「そう言ってくれると助かる」
と……小さな公園の前に差し掛かる。
「うりゃぁああ、くらえ! 和音! 太陽並の高熱!!」
「っ……!」
ミカゲは思わず足を止める。
「なにおー! 重熾! ブラックホール並の重さぁああ!!」
数名の小学生くらいの子供達がちゃんばらをしている。
「……」
「ふふ、君が攻略者でいられるのも長くはないかもな?」
「え゛!?」
「冗談だ」
「やめてくださいよ……まだまだ譲る気はありませんよ、貴方の隣りは……」
「え……」
と……
「おらぁああああ! 新刀、透幻 も忘れるなよー!」
ミカゲは小学生達に突撃していく。
「うわぁああああ、なんか変なおっさん来たぁああああ!」
「って、この人……」
「「「「…………あびゃぁああ゛ああああ゛ああ!!」」」」
「本物だぁああああ!!」
「ミカゲーーー! サインくれぇええええ!」
ミカゲは子供達にサイン攻めにあうのであった。




