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02.発見される

(……もしかして少し効いてる?)


 ミカゲは更に巨大蜥蜴の右腹部を斬りつける。


 斬りつけた部分に切り傷ができていることが確認できる。


(やっぱり効いている……!)


 巨大蜥蜴が身体を大きくひねり、尾による回転攻撃を加える。


 ミカゲはジャンプでそれをかわしつつ、すれ違いざまに尾にも一撃加える。


 更に巨大蜥蜴の背中に飛び乗り、五月雨に数発の斬撃を加える。


 巨大蜥蜴は怒るように暴れるが、ミカゲはその前に背中から離れ、地面に着地する。


 グルルル……


 巨大蜥蜴が正面からミカゲを睨みつける。


(小さなダメージは入っているが、とてもじゃないが討伐には到れない……)


「っ!?」


 と、巨大蜥蜴が強く息を吸い込みながら、身体を大きく仰け反る。


(やばい……強いのが来る……!)


 ミカゲは巨大蜥蜴の直線上から逃れようとする。


 が、巨大蜥蜴はそれを見越してか、ターゲットを深海と女の子へ変更するように頭の方向をずらす。


「くっ……!」


 ミカゲは再度、巨大蜥蜴の直線上へと戻る。


(ちくしょうが……!)


 もはやダメ元で一撃にかける様に、ミカゲは巨大蜥蜴の頭部方向に突撃していく。


「うぉおおおおおおお!」


 強い光が放たれる。


 次第に光が収束する。


(あ、あれ……?)


 ミカゲは生きている。


 魔法陣のようなもので、守られていた。


 グギャ!?


 予想外の結果に巨大蜥蜴も動揺する。


「ミカ兄、大丈夫?」


 第三者の声に、ミカゲはそちらの方を見る。


「うそ……蒼谷……アサヒさん……?」


 要救助者の女の子がその人物の名を述べる。


「アサヒ……」


 そこにはミカゲの弟であるS級攻略者の蒼谷アサヒとその二人の仲間がいた。


「なんとか間に合ってよかった。SOS配信でミカ兄が映し出された時は驚いたよ」


「確かに驚きだ。遊撃者がよくここまで耐えたものだ」


 屈強な戦士風の男はそう言いながら、剣で巨大蜥蜴の頭部をぶん殴る。


 グギャァアアアア!


 巨大蜥蜴は斬られるというより打撃を受けたかのように吹き飛ばされる。


【レイ・ステイン(28・男) 国:米 A級攻略者】


「……アンダーは暗いから苦手」


 杖を持つ魔法使い風情の金の髪の女はそんなことを言う。


【ステラ・ミシェーレ(22・女) 国:仏 A級攻略者】


「ミカ兄、要救助者もいるようだし、この巨大蜥蜴は僕が処理しちゃってもいいのかな?」


「あぁ……頼む……」


「了解」


 そう言うと、アサヒは巨銃を構える。


「さて……」


 アサヒが冷たい瞳で巨大蜥蜴を見据える。


 すると巨大蜥蜴は激しく震え始め、咆哮を上げたかと思うと、一目散に逃走する。


「あれ……? 逃げちゃったか……まぁ、結果オーライか」


 アサヒは素っ頓狂にそんなことを言う。


(……凄まじい威圧感だ)


 存在するだけで空気が張り詰めるような存在感を発しており、ミカゲは弟ながら少し恐ろしく感じる。


「あれ? ミカ兄のその宝物……」


「あっ、深海……!」


 一瞬、呆気に取られてしまうが、重傷である深海のことを思い出す。


「すまん、アサヒ! 恩に着る……! また今度……!」


「あ、うん……」


 そうしてミカゲは深海を救護施設に連れて行くために、急いで、その場を離れる。


 残されたアサヒとその仲間は一瞬、呆気に取られたような顔をするが、杖を持つ女性ステラ・ミシェーレが口を開く。


「あれがあなたの兄の……」


「そう……僕の憧れの人さ」


「……」


 ステラは疑念や嫉妬をはらんだような複雑そうな顔をのぞかせる。


「遥か高みに来てしまった今でも?」


 今度は屈強な男、レイが質問する。


「何を言ってるんだい?」


「……?」


「兄はいずれ必ずここまで来る」


 アサヒは自信ありげに言い放つ。


「「……?」」


 二人は「何言ってんだこいつ」というようにステラはいぶかしげに、レイは目を点にして首を傾げる。


 ◇


「……」


 深海はベッドの上で目を覚ます。


「深海……よかった」


「蒼谷さん……」


「ごめんな、家族が来るまでの間と思ってたが……」


「いえ……」


(……っ)


 深海の頬を雫がつたう。


(……)


 深海は左腕で顔を覆う。


「蒼谷さん……俺……腕、無くなっちまいました……」


(……)


 ミカゲは言葉が見つからなかった。


「蒼谷さん……隻腕の攻略者っていましたっけ……?」


「すまん……俺は……知らない……」


「……じゃあ、俺が最初になるしかないっすね」


「…………あぁ」


「蒼谷さん……諦めてないんでしょ?」


「っ!?」


「なってくださいよ。攻略者……俺も追いかけるんで……」


「っ! …………あぁ」


 ◇


 ミカゲは病院を出て一人、夜道を歩く。


(…………攻略者か……)


 ミカゲはなんとなく空を見上げる。


(遊撃者の多くは深海のように攻略者になる夢を諦め切れない奴か、小さい時からそれだけをしてきて他に何もできない奴。ごくまれに事務所の目に留まり、遊撃者から拾い上げで攻略者になる奴もいるが、それは相当な数字を残している奴……そんな奴は宝物特性が元々、レベル8以上というオチだ)


 TRRRRR


「ん……?」


 その時、ミカゲのデバイスに着信がある。


「はい……蒼谷です。はい……はい……? あのー、いたずら電話やめてもらえませんか?」


 ◇


 数時間前――


「へぇー、アンダーに"はぐれ"ねぇ……可哀想に……」


 SOS配信で巨大蜥蜴に苦戦するミカゲの姿を暗い部屋で観ている研究者のような白衣の女性がいた。


 白衣女性はぽけーとポテチを食べながら観ている。


 しかし……


「ん……? …………んん!?」


 次第に画面をめちゃくちゃ近づけ、食い入るように見始める。


 ◇


「すまない、今日、アンダーでSOS配信してた遊撃者のこれまでの映像アーカイヴがあれば提供してもらいたい。あぁ、そうだ。あるものは全て頼みたい」


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【作者新作】

<魔法技師の気ままな魔道具作りライフ>

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