平凡な幸せ 8
「まったく、やっと落ち着いたと思っていたのに、あなたという子は。マリンちゃんを泣かすような真似ばかりしていたのですって?マリンちゃんは特殊な環境で育ったのだから、それだけ気を付けてあげなくてはいけなかったのではなくて?」
「・・・・・」
「あなたの言動は最低だったと、アンが言ってましたよ。仲良くやっているものだとばかり思っていたのに、いったいどういう事なのかしら」
「・・・・・」
「しかも、今度は一転、馬鹿みたいにマリンちゃんの尻ばかり追い掛け回し、昼夜問わず行為に及んでいたとか。ケダモノ以外の何者でも無かったと、アンが泣いていましたよ」
「・・・・・」
「子供が出来たら、山程の品を買い与え、金で解決しようとした?そんな方法がよくない結果を生む事など、あなただって分かっている筈でしょう?これで親になろうというのだから、本当に情けない」
「・・・・・」
いったいアンはどんな説明をしたのか。
延々と続く説教に、ロイルは溜息を吐いた。
「聞いているのですか!?」
目を吊り上げて怒るシアに、ロイルは苦笑して答えた。
「聞いていますよ。反省しています。母さんも強くなりましたね。でもそろそろマリンを返してもらえませんか?」
「・・・・・」
シアは溜息を吐いて目元を和らげた。
「本当に反省しているのかしら。でも・・・、ロイルも変わりましたね。マリンちゃんとアンに感謝しなければいけないわ」
シアが立ち上がる。
「では、行きなさい」
「・・・は?マリンは?ここに居るのではないのですか?」
目を見開くロイルに、シアが笑う。
「居ませんよ。来たのはアンだけです。ロイルが訪ねて来たら説教して欲しいと言って、馬車とオキを連れて帰って行きましたよ」
「馬車・・・?」
「ああ、それと伝言です。『本気で一からやり直したいのなら、来て下さい』ですって」
「一から・・・」
ロイルは顎に手を当て暫し考えていたが、ハッと気付くと、シアに挨拶もせずに飛び出した。
「まあ、仕方のない子ね」
ロイルの後ろ姿を見ながら、シアは微笑んだ。