表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/73

聖女マリアンヌ 2

 馬車に揺られ辿り着いた湖は、信じられない程美しかった。

 マリアンヌは瞳を輝かせ、湖を見つめる。

「マリアンヌ様、ベールをお脱ぎになりますか?」

 アンの問いかけに振り向いたマリアンヌは、いつの間にか馬車や護衛がいなくなっている事に気付いた。

 マリアンヌがベールを脱ぐと、アンがそれを受け取る。

「綺麗ね」

「はい」

「鳥がいるわ」

「はい」

 手を胸の前で組み、感動しているマリアンヌをチラリと見て、アンは頭を下げる。

「わたくし共は、少し離れた場所で待機しております。ごゆっくりお楽しみ下さい」

「・・・え?」

 マリアンヌが振り向くと、アンは既に背中を向けていて、木々の間を歩いて行ってしまった。

 アンが去って行き、マリアンヌは戸惑う。

 このように一人にされても、何をしてよいのか分からないのだ。

「アン!」

 呼んでみたが返事は無い。

「・・・・・」

 不安な気持ちはあるが、折角ここまで来たのだ。

 マリアンヌは気を取り直し、取り敢えず湖の近くまで行ってみた。

 水面はキラキラと輝き、図鑑でしか見たことが無い鳥が、泳いでいる。

 中を覗くと魚の影が見えた。

「綺麗・・・」

 もう二度と見る事が出来ないであろう風景・・・。

 頬を撫でる風が気持ちいい。

 一羽の鳥が空に向かって羽ばたくと、それが合図だったように、鳥達が一斉に空へと飛んで行った。

「ああ、素敵」

 自分にも翼があれば・・・と、つい思ってしまい、マリアンヌは自嘲した。

 視線を湖に無理矢理戻し、行儀が悪いと思いつつ、地面に直接座り、水に手を浸してみる。

「冷たい」

 指先を、小さな魚が掠める。

「あ・・・」

 もしかして、掴めるかもしれない。

 マリアンヌはその魚を追って手を動かす。

 しかし魚は素早く、触れる事さえ出来ない。

「ああ、待って。行かないで」

 湖の中心へと向かう魚に思い切り手を伸ばす。

「―――――きゃあ!」

 夢中になり過ぎてバランスを崩した身体が、湖に向かって倒れる。

 恐怖にギュッと目を瞑った。

「・・・・・?」

 しかし、予想していた衝撃はやって来ず、それどころか、マリアンヌの身体は何か柔らかい物に包まれていた。

 恐る恐る目を開けたマリアンヌは、間近に見知らぬ顔があり驚愕した。

「そんなに身を乗り出しては危ないですよ、お嬢さん」

 爽やかに笑う男に、マリアンヌの胸が高鳴った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ