表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/73

嘘と真実 ④

 『ルル』が見付からない。

 ロイルは頬杖をついて、今まで関係を持った事のある女の顔を思い出そうとした。

 しかし、どの女も記憶がぼやけていて、はっきりしない。

「参ったな・・・」

 このままではあの子達を、ずっと育てていかなければならないかもしれない。

 そもそもロイルは子供が好きではない。

 むしろ嫌いだ。

 何としても『ルル』を見付けなければいけないが、手掛かりが少なすぎた。

 溜息を吐いて頭を掻き毟っていると、ノックの音がして、マリンと子供達が入ってきた。

「ロイル、サーシャが外に出たがっているの。お散歩に行きたいのだけど・・・」

「ああ、行ってらっしゃい」

 マリンは困った表情で、ロイルを見た。

「ロイルも一緒に行きましょうよ」

「・・・え?」

 驚くロイルの目の前で、マリンは子供達に話し掛けた。

「サーシャもユーイも、お父様が一緒がいいわよね」

「・・・とうしゃま?」

 サーシャの言葉に、ロイルの背中に寒気が走る。

 冗談じゃない。

 マリンがサーシャを抱き上げ、ロイルの膝にのせる。

「いいわね、サーシャ。お父様に抱っこしてもらって」

 微笑むマリンに、ロイルはとてつもない危機感を覚えた。

「さあ、行きましょう」

 ユーイを抱き、マリンは部屋から出ていく。

 ロイルは膝の上のサーシャを見て思わず顔を引きつらせたが、仕方なく立ち上がり、マリンの後を追った。

 庭に出ると、アンが乳母車を用意して待っていた。

「こんな物まで買っていたのか・・・」

 呟くロイルにマリンが振り向き答える。

「お散歩に行くのに、必要でしょう?」

「・・・・・」

 育てる気満々のマリンに、目眩がする。

 マリンがユーイとサーシャを乳母車に乗せ、押して歩きだす。

「・・・アン―――――」

「行ってらっしゃいませ」

「いや、そうじゃなく―――――」

「行ってらっしゃいませ」

「俺の代わりに―――――」

「行ってらっしゃいませ」

「・・・・・」

「行ってらっしゃいませ」

 ロイルは特大の溜息を吐くと、重い足を引き摺って、マリンの後に付いていった。

「お外は気持ちがいいわね。今度はお弁当を持って、馬車でお出掛けしましょう。お父様と母様が出逢ったた、とても綺麗な湖があるのよ」

「・・・・・」

 自分の事を『母様』と言うマリンに、ロイルは絶句する。

 楽しそうに子供達に話し掛けながら、マリンは近所の広場までやってきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ