嘘と真実 ④
『ルル』が見付からない。
ロイルは頬杖をついて、今まで関係を持った事のある女の顔を思い出そうとした。
しかし、どの女も記憶がぼやけていて、はっきりしない。
「参ったな・・・」
このままではあの子達を、ずっと育てていかなければならないかもしれない。
そもそもロイルは子供が好きではない。
むしろ嫌いだ。
何としても『ルル』を見付けなければいけないが、手掛かりが少なすぎた。
溜息を吐いて頭を掻き毟っていると、ノックの音がして、マリンと子供達が入ってきた。
「ロイル、サーシャが外に出たがっているの。お散歩に行きたいのだけど・・・」
「ああ、行ってらっしゃい」
マリンは困った表情で、ロイルを見た。
「ロイルも一緒に行きましょうよ」
「・・・え?」
驚くロイルの目の前で、マリンは子供達に話し掛けた。
「サーシャもユーイも、お父様が一緒がいいわよね」
「・・・とうしゃま?」
サーシャの言葉に、ロイルの背中に寒気が走る。
冗談じゃない。
マリンがサーシャを抱き上げ、ロイルの膝にのせる。
「いいわね、サーシャ。お父様に抱っこしてもらって」
微笑むマリンに、ロイルはとてつもない危機感を覚えた。
「さあ、行きましょう」
ユーイを抱き、マリンは部屋から出ていく。
ロイルは膝の上のサーシャを見て思わず顔を引きつらせたが、仕方なく立ち上がり、マリンの後を追った。
庭に出ると、アンが乳母車を用意して待っていた。
「こんな物まで買っていたのか・・・」
呟くロイルにマリンが振り向き答える。
「お散歩に行くのに、必要でしょう?」
「・・・・・」
育てる気満々のマリンに、目眩がする。
マリンがユーイとサーシャを乳母車に乗せ、押して歩きだす。
「・・・アン―――――」
「行ってらっしゃいませ」
「いや、そうじゃなく―――――」
「行ってらっしゃいませ」
「俺の代わりに―――――」
「行ってらっしゃいませ」
「・・・・・」
「行ってらっしゃいませ」
ロイルは特大の溜息を吐くと、重い足を引き摺って、マリンの後に付いていった。
「お外は気持ちがいいわね。今度はお弁当を持って、馬車でお出掛けしましょう。お父様と母様が出逢ったた、とても綺麗な湖があるのよ」
「・・・・・」
自分の事を『母様』と言うマリンに、ロイルは絶句する。
楽しそうに子供達に話し掛けながら、マリンは近所の広場までやってきた。