嘘と真実 ①
寒い冬が終わり、春が来た。
暖かい日差しのなか、マリンとアンは、庭でお茶を飲んでいた。
「ああ、いい天気ね」
「ええ、そうでございますね」
マリンが花壇に視線を向け、微笑む。
「花が綺麗ね。アンが一生懸命手入れをしてくれているおかげね」
「まあ、ありがとうございます」
「後で散歩にでも、行きましょうか」
「はい、マリン様」
カップをテーブルに戻し、ふと門の方を見てマリンは首を傾げた。
「あら、あの子達、うちに用かしら?」
門の外から、小さな子供が二人、屋敷の中を覗いていた。
マリンの言葉に、アンも門を見て、首を傾げる。
「訊いてまいりましょうか」
立ち上がり、子供達のところに行ったアンだが、暫くすると、困り果てた表情でマリンに視線を送った。
「・・・・・?」
マリンも立ち上がり、門まで行き、子供達を見下ろした。
歳は二歳から三歳くらいだろうか。
女の子と男の子で、ヒラヒラとした可愛い服を着て、女の子は肩からポシェットを下げていた。
「どうしたの?この子達」
「それが・・・、まだよく話せないようで・・・」
マリンはしゃがんで、子供達と視線を合わせた。
「あなた達、お母様とお父様は?」
「・・・かあしゃま?」
「・・・・・」
キョトンとした女の子と、少し怯えた表情の男の子。
「お名前は?」
「・・・・・」
「・・・・・」
マリンは立ち上がると、首を傾げた。
「駄目ね」
「迷子でしょうか?」
困惑した表情で、アンも首を傾げる。
「取り敢えず、ロイルを呼んでちょうだい。あなた達、こちらにいらっしゃい」
マリンは子供達の手を握り、玄関に向かう。
アンがロイルを呼ぶ為、早足で先に屋敷の中に戻って行った。
屋敷の中に入ると、マリンはもう一度子供達に話し掛けた。
名前は?歳は?おうちは?
しかし、子供達の答えは曖昧で、マリンには分からない。
マリンは不安そうにしている男の子の頭を、優しく撫でた。
「大丈夫よ。ロイルにお母様を捜してもらいますからね」
「・・・かあしゃま」
マリンが微笑んで頷いた時、階段を降りる音が聞こえた。